コンサルタント=ピアニスト=ランナーはきょうも語る

現役経営コンサル兼ピアニストがランニングと仕事術とピアノと英語とかについて語ります

ピアノ

ショパン前奏曲集作品28(87)イエルク・デームスのアドバイス(2/3)

前回に引き続き、イエルク・デームス誌上レッスンより各曲の重要ポイント。 今回は9番から16番まで。 第9番 ホ長調: 小さな大曲です。バスにはバスの主張があるので、上声のメロディと同様に美しく弾いてください 第10番 嬰ハ短調: 3、4、7、8、13小節と結…

ショパン前奏曲集作品28(86)ショパンの調性感覚

前回までの記事で、月刊ショパンに掲載されたイエルク・デームスの誌上レクチャーの冒頭で、イエルク・デームス氏が書かれていた「ショパンは調性に対して独自の感覚を持っていた人で・・・」とある点に、個人的にずっと思っていたことをはっきり言っていた…

ショパン前奏曲集作品28(85)イエルク・デームスのアドバイス(1/3)

月刊ショパン1985年5月号から7月号に3回に分け、往年の名ピアニストであるイエルク・デームス(1928年〜)によるショパン前奏曲集作品28の誌上レクチャーが掲載されている。 これが実際の演奏上とても参考になるポイントにあふれているので、特に重要と思う…

ショパン前奏曲集作品28(84)アナリーゼの意義

この曲にしばらくのブランクを経て取り組み再開してからというもの、自分の練習のあり方がシフトした。 そもそも一度ひと通り弾いているので音高音価は頭に入っているのだが、自筆譜を見たり、様々な角度からの研究論文を読み、和声を分析し、曲想に想いを巡…

ショパン前奏曲集作品28(83)難曲を弾き易くするヒント③24番

Henle社の曲目別難易度では最高難度の9にランクされているこの曲であるが、確かに決して易しくはないものの、最高ランクの9というほどではないと思う。 この曲の難しさ(あくまでもメカニカルな側面において)のポイントは2つ: ①左手の開離和音を正確に弾…

ショパン前奏曲集作品28(82)難曲を弾き易くするヒント②19番

前回の16番に続き今回は19番についてどうすれば弾きやすくなるかのポイントを挙げてみる。 19番の難しさは両手共に開離した分散和音が連続するところにあり、しかも変化が激しいところにある。開離が大きいため、しばしば跳躍を伴う。 この種の曲は、ショパ…

ショパン前奏曲集作品28(81)難曲を弾き易くするヒント①16番

作品28は作品10や作品25といった曲集にくらぶれば純粋にメカニカルな難度は高くないとはいえ(音楽的には別)、メカニカルに難度の高い曲がいくつかある。 最たるものは16番、19番、24番の3曲。これらに次ぐのが3番、8番、12番であろう。 今日は作品28の中で…

ショパン前奏曲集作品28(80)エキエル版

ショパンの曲に取り掛かるのであれば、やはりエキエル版(ナショナル・エディション)を参照しない訳にはいかない。 ショパンエチュードであれば、子供の頃に買ってもらった春秋社版(プレリュードとセットになっている世界音楽全集ショパン4である)に加え…

ショパン前奏曲集作品28(79)ベーレンライター版

おそらく私の1,000倍(誇張ではない)は音楽を理解している師匠3によると、楽曲の研究に当たっては常に複数の版を参照するのが良く、また一般に出版年月が新しいものほど信頼できる(もちろん例外はある)ということである。 自分はショパン前奏曲集作品28…

スルタノフのクライバーンコンクールライブ

最近めったにCDを聴かなくなったのだが、実にひさしぶりにスルタノフの音源をCDで聴いた。 1989年のヴァン・クライバーン国際ピアノコンクールのライブ録音である。 収録曲はベートーヴェンのピアノソナタ熱情、ショパンのピアノソナタ第3番作品58などだが、…

ショパン前奏曲集作品28(78)曲目概要まとめ

ここでひとまず作品28全24曲のスペックと、自分が推奨する演奏時間と表現する感情を一覧にしたものを表にまとめる。 推奨する演奏時間は基本的に自分が良しとするAlfred Cortotの演奏(1933)を5秒単位で切り上げたものに若干自分好みで加減したものを秒数で…

ショパン前奏曲集作品28(77)最近のレコーディング(4)Emmanuel Despax

先日投降した最近のレコーディング以来、ひさしぶりにApple Musicでショパン前奏曲集作品28の音源を検索したところ、新たに追加されていた。フランス人ピアニストEmmanuel Despaxの2017年の演奏である。 ちなみに前回投降したレコーディング評はこちら: jim…

2台ピアノ協奏曲の午後

ここのところプロのピアニストのコンサートで立て続けに失望したため、これからはバイオリンやシンフォニーのコンサートに限ると思っていたところに、4人の気鋭の日本人若手ピアニストである實川風氏、黒岩航紀氏、務川慧悟氏、小林海都氏による、リスト1番…

ショパン前奏曲集作品28(76)演奏会用選曲オプション

そろそろ公開の場で演奏することを念頭に置いて現実的な選曲オプションを考えてみる。 アマチュアなので、ソロリサイタルやジョイントリサイタルを開催するとして全曲を弾くということも考えてはいるが、先の話になるので、仲間うちのコンサートやコンクール…

ショパン前奏曲集作品28(75)オーケストラ編曲版(その6)

前回(その5)に引き続き、Jean Francaix編曲によるショパン前奏曲集作品28オーケストラ版の個人的な評価を書いてみる。今回は21番から24番まで(21番は32分37秒から))。 www.youtube.com 第21番変ロ長調:弦楽がメイン。Ges durに転調するところで木管に…

ショパン前奏曲集作品28(74)オーケストラ編曲版(その5)

前回(その4)に引き続き、Jean Francaix編曲によるショパン前奏曲集作品28オーケストラ版の個人的な評価を書いてみる。今回は17番から20番まで(17番は25分08秒から)。 www.youtube.com 第17番変イ長調:個人的にはこの編曲は気に入った。師匠からシャープ…

ショパン前奏曲集作品28(73)オーケストラ編曲版(その4)

前回(その3)に引き続き、Jean Francaix編曲によるショパン前奏曲集作品28オーケストラ版の個人的な評価を書いてみる。今回は13番から16番まで。 jimkbys471.hatenablog.com 第13番嬰ヘ長調:高音部の旋律がバイオリンとビオラ、低音部がチェロという構成は…

ショパン前奏曲集作品28(72)オーケストラ編曲版(その3)

前回(その2)に引き続き、Jean Francaix編曲によるショパン前奏曲集作品28オーケストラ版の個人的な評価を書いてみる。今回は9番から12番まで。 jimkbys471.hatenablog.com 第9番ホ長調:ゆったりした大河の流れを思わせるこの曲の主旋律を金管に担当させて…

ショパン前奏曲集作品28(70)オーケストラ編曲版(その1)

新年あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。 新年最初の投稿も、引き続きショパン前奏曲集作品28について。 この曲は弦楽器などへの編曲は数多いが、Jean Françaixによるオーケストラ編曲の演奏がYoutubeで聴ける。4曲ずつ6回に…

ショパン前奏曲集作品28(68)研究再開24日目ー第24番ニ短調

ショパン前奏曲集作品28解凍、24日目は第24番である。 言わずもがな終曲であるが、一説によると、24番をニ短調にすべくショパンは五度圏で設計したとか。 ニ短調という調性は、ショパンが作品28で伝えたかった最大のメッセージである、こよなく愛する祖国を…

ショパン前奏曲集作品28(67)研究再開23日目ー第23番ヘ長調

ショパン前奏曲集作品28解凍、23日目は第23番である。 もはや何度目かわからないがこの曲も難曲である。 この曲の難しさは、低音部は朗々と歌うのに対して、高温部の音域の広い分散和音は燦燦と明るく輝くかつ軽やかにレガートで奏することが求められるから…

ショパン前奏曲集作品28(66)研究再開22日目ー第22番ト短調

ショパン前奏曲集作品28解凍、22日目は第22番である。 7年ほど前に取り組んでいた頃は、一見シンプルな譜面であるにもかかわらず、弾きにくい曲だと思った。 しかし、あれからリスト(ドンジョバンニ)、スクリャービンのソナタ(3番、7番)、メシアン(喜び…

ショパン前奏曲集作品28(65)研究再開21日目ー第21番変ロ長調

ショパン前奏曲集作品28解凍、21日目は第21番である。 のっけからショパン先生のキビシー指示である。 Cantabile。歌うように。 ショパン先生がおっしゃるからにはそんじょそこらのカンタービレではない。 ものすごく歌えということである。 右手の旋律が、…

ショパン前奏曲集作品28(64)研究再開20日目ー第20番ハ短調

ショパン前奏曲集作品28解凍、20日目は第20番である。 悲嘆のコラール。1拍毎に変わる和声の機能をしっかり理解して弾きなさい(と師匠に言われている)。 たとえば4小節目1拍目のドッペルドミナント、6小節目2拍目のドッペルドミナント第5音下方変位属9、そ…

ショパン前奏曲集作品28(63)研究再開19日目ー第19番変ホ長調

ショパン前奏曲集作品28解凍、19日目は第19番である。 左右共に開離分散和音で跳躍をしばしば伴うと共に同時跳躍もあるが、それは音楽的にもちろん意味があってのこと。 マインドレスに反復練習するのではなく、同時和音と見て各声部の移行を考えて弾くこと…

ショパン前奏曲集作品28(62)研究再開18日目ー第18番へ短調

ショパン前奏曲集作品28解凍、18日目は第18番である。 曲の冒頭から緊張感・不安定間の強い属9の和音で始まり、これが曲の過半を支配する。 最初はヘ短調、次に下属調のロ短調に転調するが、解決せず、やはり属9である。が、ここはしかし転調するので色は変…

ショパン前奏曲集作品28(61)研究再開17日目ー第17番変イ長調

ショパン前奏曲集作品28解凍、17日目は第17番である。 コルトーはこの曲を評して「She told me,”I love you.”」と言ったそうだが、自分の曲のイメージはこれに近い。 先行する3曲とはうってかわって優しさに溢れた曲想である。 この曲の演奏のポイントは、内…

ショパン前奏曲集作品28(60)研究再開16日目ー第16番変ロ短調

ショパン前奏曲集作品28解凍、16日目は第16番である。 Presto con fuocoと指示がある。烈しい曲である。が、最初から最後まで猛り狂う演奏では単調で凡庸である。 烈しい中にも感情の起伏を表現せねばならない。 右手は流れとうねりが重要。一音一音ではなく…

ショパン前奏曲集作品28(59)研究再開15日目ー第15番変ニ長調

ショパン前奏曲集作品28解凍、15日目は第15番である。 この曲を雨だれと呼んだのはショパンではない。ハンス・フォン・ビューローは雨だれと評したが、コルトーは死をイメージした。自分が抱くイメージはコルトーに近い。Asの連打は落ちる雨粒ではなく、絶え…

ショパン前奏曲集作品28(58)研究再開14日目ー第14番変ホ短調

ショパン前奏曲集作品28解凍、14日目は第14番である。 ほぼ全曲がオクターブのユニゾンのためソナタ2番作品35の終楽章との類似性をしばしば指摘されるが、ソナタがコーダ的意味合いなのに対し、この14番はIntermezzoであるところで一線を画す。 ユニゾンの曲…