コンサルタント=ピアニストはきょうも語る

現役経営コンサル兼ピアニストが仕事術とピアノと減量と英語と沖縄とかについて語ります

なぜ薬剤費は下がらないのか

  • Reutersの2016/8/24付け記事に直球剛速球の記事が掲載されました。タイトルは”Can anything contain U.S. drug costs?”です。
  • 医療費抑制圧力が財政上の要請から必然的に高まり、米国では特に患者側の薬離れが一見進んでいるように見え、しかも医療の質が問われHTA等医療技術評価も進んでいる(いずれも過去のコラムご参照)というのになぜ一向に薬剤費が下がらないところか上がっているのか(つい先日日本の医療費統計速報も出ていましたね?)、を問うものです。
  • Reuterの記事にはその主たる要因がブランド薬を守る薬事のシステムにあるとしています。米国のような市場価格の世界においては、特許が切れるとたちまち薬価は1/10になったりします(日本のように6割が5割になった位でジェネリックメーカーが大騒ぎする国とは比べ物になりません)ので、なおさらブランド薬は最大の市場である米国においては重要なのです。
  • ではなぜシステムはブランド薬を守るのか。それは大義名分としては薬効と安全性が証明され、安定的に供給されるという、薬として充たさねばならない条件をしっかり満たしているのがブランド薬だからです。もう一つの理由は、これと矛盾するものではないのですが、製薬業界はヘルスケア業界における最大の既得権益、ワシントンを動かす存在だからです。
  • ここで多くの方は疑問を持たれるでしょう。いくら既得権益が強くても、彼らがコントロールできるのは製品(薬)と価格(薬価)であって、需要(処方量)はコントロールできないのではないか。患者は薬離れしているのではないか。米国のように民間の医療保険が支払者である場合には、保険者が高い薬や過剰な薬剤投与をコントロールするのではないか、と。
  • 結論からいうと、そのような市場原理を代表するかのようなシステムが機能しないからこそ薬剤費が下がらないのです。新しい薬はやはりそれなりに治療上の有効性が高いから世に出てくるのであり、画期的な効能を持つ薬であればそれだけ価格も高い訳です。それらの薬はしかもがんや自己免疫疾患といった深刻な疾患の治療に使われるのです。
  • もう一つ医療が担保しなければならないことに、「アクセス」があります。そもそも医療経済学的な問題を他の市場のように市場経済に任せることができないからこそあえて「医療経済」というのであり意義も異なる訳です。
  • この辺りの議論は、必ずしも業界にいる人でもきちんと理解し説明できるとは限りませんので、ぜひこの問題について自分なりに考えていただくことをお勧めします(自分も考えます)。ヘルスケア業界の誰にとってもこの議論は極めて重要で、短期的にも中長期的にも示唆深い問題です。