コンサルタント=ピアニスト=ランナーはきょうも語る

現役経営コンサル兼ピアニストがランニングと仕事術とピアノと英語とかについて語ります

再生医療はゴール思考で

これはあくまでも私見ですが、再生医療に期待するものはやはり現時点で有効な治療法が無く、多くの患者が著しく苦しんでいる疾病に対して、安全で低コストな治癒の道を提供すること以上のものではありません。そのような疾病の筆頭はやはりがんであり、腎不全であり、肝硬変であり、脳梗塞だと思います。

これらの疾病に対して、既に多くの(200以上ともいわれる)臨床試験が(フェーズ1以前のものもの含めて)進行中とのことで、承認が近いものもあり、期待は大きいです。

が、しかし仮に条件付承認されても「再生医学」ではなく「再生医療」として開花するか否かは、医療費抑制の必要性がますます高まる中、また倫理上の問題も未解決の部分がある状況において、市民権を得るにはおそらくはあと数十年はかかるのではないかとおもいます。

バイオシミラー市場がなかなか立ち上がりませんが、それ以上の難しさが再生医療にはあるからです。

門外漢が再生医療の専門家の方々にこんなこと言ったら手厳しく叱責を受けることは確実かとおもいますが、先端医療である再生医療には、「ゴール思考」が弱いように思います。

そもそも生体のメカニズムに未解明の部分が多く、再生医療の研究開発を進める中で初めて遺伝子、また分子レベル・細胞レベル・組織レベルの新たな発見が次々に出てきますし、また脳や肺や腎臓の様な極めて複雑な器官を「再生」することは遠大な目標であることに間違いはないとは思います。

しかしながら、完全に臓器を再生するというところでも、眼前の開発品の承認にゴールを設定するのでもなく、経済的な制約もある中でまた個々人のライフスタイルも勘案して再生医療は(それら両極の中間で)どうあるべきなのか、が見えない気がしています。

再生医療に参入する企業は多いですが、開発リスクが医薬品同様以上に高い上に市場が未形成の再生医療分野において、周辺市場に収益機会を見出すところまでは良いものの、どのような参入形態、関与形態をとるにしても、この再生医療が目指す姿、ビジョンが依然として不在であろうと思います。

実はいま頼まれて、ある企業の再生事業戦略を策定するお手伝いをしています。まだ始まったばかりなのですが、不可知の領域も多く、いつ市場が立ち上がるのかも見えていない状況でどこまで現実的かつ骨太なストーリーを描き切れるのか、自分への挑戦ととらえがんばります。