コンサルタント=ピアニストはきょうも語る

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ケア・コンパクト・シティ

2025年問題が一層現実味を増してくる(策を打たなければジャーナリズムが煽るより酷い状況になるかもしれないが)、ひとつ有望な構想として挙がっているのが、「ケア・コンパクトシティ」です。

財務相、現法政大准教授の小黒一正氏らが提唱するこの構想は正式には「地域包括ケア・コンパクトシティ」といい、筆者の先輩もアドバイザーとして入りまとめあげられたもので、先日も少し議論に参加してきました。

厚労省が推進している地域包括ケアは、コンセプトとしては正しいのかもしれませんが、では具体的に各ステイクホルダーがどういう取組をすれば良いのかまでは立案していませんし、個々の自治体の事情を鑑みるに、普遍一般解ではなく個別特殊解にならざるを得ない部分が多分にあるというのも一因かもしれませんが、それが少なくとも現段階では監督官庁の限界なのだと思います。

小黒氏らの提唱するケア・コンパクトシティは、高齢社会における医療・介護のあり方を、地方行政の在り方も含め、またまちづくりのパラダイムシフトの具体的な手法も含め、かつ既に全国各地で(たとえば埼玉県和光市島根県邑南町、東京都稲城市など)の先進的な取組や成功事例も踏まえたもので、説得力があると思います。

国交省が提唱するコンパクト・シティは、国交省のウェブサイトをみても判るが、なぜコンパクトシティかの説明における医療・介護の記述がきわめて抽象的でわかりにくい(縦割行政を反映しているのでしょう)ですが、だからこそケア・コンパクトシティという構想に具体化する意義があるとも言えます。

人口密度が低い地域からガソリンスタンドが消え、スーパーが消え、コンビニも消えていく中、高齢化が進行する住民が医療・介護はおろか日常生活にも困窮する状況が現実に起きている中、まずやるべきは「コンパクト化」つまり面密度を上げることですが、それだけではケア・コンパクトシティにはなりません。

街づくりの基本前提として、従前のモビリティの普及、すなわち自動車や鉄道、バスでの移動を前提としたものではなく、歩行圏内で用が足せること、また歩行者しかも運動能力が低下した人間にとってやさしい、ヒューマンスケール、ユニバーサルデザイン、といった、従来からの(未だ普及していない)概念も実現・徹底しなければなりません。

面密度を上げることによって、介護サービスの非効率もある程度解消することはあるもののそれだけでは不十分で、首長のビジョンとリーダーシップ、ケアマネジャーの確保とレベルアップ、といった地方自治の問題も絡めて変えていかなくてはなりません。

幸いいくつか実際に成功事例によるけもの道も開かれようとしていますが、普遍一般解でも個別特殊解でもない、個別事例の抽象度を上げて共通要因を特定して政策で後押しすること、また抽象度を上げた中間解を他地域に展開していくことが、このコンセプトの認知を上げることで図ることができるように思います。一筋の光明がみえてきましたね。

街を活性化することも同時にやらなければなりません。ケア・コンパクト・シティが持続可能であるためには、そこに経済性が成立しなければならない。そのためには産業、雇用が必要です。高齢者の貯蓄と衰退する自治体の財政を補うためには、最低限その地域が自給自足できるための資金が継続的に生み出せる仕組が必要です。従来のようなふるさと納税や特産品の出荷だけで足りるでしょうか。

地方交付税や特産品の出荷、それに観光収入で十分に収入が確保できる自治体は限られるかもしれません。観光資源や立地や気候に恵まれている必要もあるでしょう。

これまでの自治体における財政再建は、市長や職員の給与カット、小中学校や公的施設の統廃合、市民サービスの削減といったコスト削減策ばかりで、これは止血には必要でしょうが、待っているのは夕張市が2007年に財政再建団体になって以降約10年間に辿った縮小と荒廃の路を辿るだけになってしまいます。

最近自治体経営、コミュニティマネジメントといった概念が注目されていますが、自治体という組織をどう維持していくのか。収入を確保しコストを抑制しつつも住民の生活水準を担保する。これは当たり前のことですが、そのようなスキルセットがこれまで自治体においてどれだけ重視されていたでしょうか。

小黒氏の主張にはケアコンパクトシティを実現するには首長の才覚が必要だとしています。その才覚とは、コミュニティマネジメントスキルに他ならないと思います。

企業にも株主、金融機関、従業員、取引先、仕入先、監督官庁など様々なステイクホルダー(利害関係者)がおり、その複雑な関係性の中で成長と収益性を確保しなければならず、リーダーシップとマネジメントスキルがものを言います。

特に大都市圏から遠く離れた地方の市町村こそ、高度なマネジメントが求められるでしょう。一部分民営化するのではなく、大宗を民間に任せるべきではないでしょうか。