これまでこのブログで、医療関連では、医療ビッグデータやAIについて取り上げてきていますが、AI(人工知能)については人間の(医療の世界に従事する者も含め)仕事を次々に奪って(必ずしも代替するとは限らず補助する場合もありますが)いきますが(我々プロフェッショナルの仕事も例外ではありません)、AIが人類の知能を超える「シンギュラリティ」が訪れる2045年問題を提唱している方々は、かねてより我々が現実と認識しているこの世界は既に情報空間のシミュレーションであると主張しています。
だとすると、このシミュレーションを行っている存在が我々人類とは別の世界にいて(あるいはこの世界にいるのだけれども、この世界の住人のように振る舞っている、もしくは人間の姿をとっていないか我々より高い次元に住んでいるので見えない)、彼らが操る情報の量とその処理能力は、とてつもなく高い次元のものかもしれません。
最近ハマっている巨大数から考えていることは、だとするとその情報の量とその処理能力はどの程度のものなのか、我々人類が使っている指標にするとどのぐらいのものになるのかを考えてみたいとおもいます。
まず、大前提として、この世界がすべてコンピュータ上のシミュレーションであるとすると、4次元的に(空間の3次元+時間)我々がどっからどうみても(最先端の技術を駆使して)不自然と思えないものでなければなりません。
最初に、空間の広がりですが、我々が物理的に把握できる空間は少なくとも太陽系(この場合、とても残念なことですが準惑星に格下げされてしまった、先ごろNASAのNew Horizonが到達した冥王星まで含めます)の範囲としましょう。
太陽から冥王星までの平均距離(楕円軌道なので平均をとります)は44.506973AU(天文単位)、1AUは太陽と地球の平均距離149,597,870,700mなので、太陽と冥王星の距離(D)はこの掛け算で
D=5,900,898,441,221㎡=5.9x10^12m
になります。空間の広がりは3次元なので、このDを半径とする球の体積Vは
V=4π*D^3/3=8.6068*10^38m^3
となります。
シミュレーションは、この球状の空間をどれだけ細かく描くことができるかを決めなければならないので、この空間内で検知できるもっとも小さい長さの単位ということにします。人類が考えている長さの単位で最も小さいのはマックス・プランクという量子物理学者が定義したプランク長(Planck length, lp)で、1lp=1.61622910^(-35)という、ナノなどよりはるかに(とんでもなく)短いものです。
先の太陽系空間をこのプランク長1lpのドット(点)で埋め尽くすとしますと、Vの単位を㎡からlpに変えれば(換算割すれば)よいので、この点の数は:
V=8.6068*10^38m/(1.61622910^(-35))^3=2.0386*10^143(個)
となります。Googleの社名の元になった巨大数googolは10^100ですが、この数は全宇宙の陽子の数とされるエディントン数10^80の1億倍の1兆倍と超巨大な数ですが、この点の数だけでgoogolをはるかに(10^43倍)上回っていることになります。
以上で空間上のメッシュの細かさと大きさは決まりました。
次は時間です。これも時間の長さと刻みをどうするかです。時間の長さですが、「リアルな」人間はせいぜい100年ぐらいしか生きられないし、100年以上前のことを「リアルに」検証することはできないので100年としましょう。時間の刻みですが、これもやはり物理学者が使う最小の時間単位としましょう。そうでないとマニアックな人間の物理学者にシミュレーションに「バレ」てしまいます。
物理的な時間刻みで最も短いのはガンマ線の周波数42EHz(エクサヘルツ)=2.42*10^18Hz(=1/sec)ですが、先の長さの最小単位としたブランク長に対応するプランク時間、およびその逆数のプランク周波数を使うのが論理的にも整合性が取れていると思うので、それを採用すると、1プランク周波数=1.8549*10^43、1プランク時間ltはこの逆数1lt=5.391126*10^-44)となります。
100年間は3,155,760,000sec(約32億秒)なので、これをプランク時間で換算すると、
100年=5.85361^10^52(プランク時間lt)
となります。
したがって、いよいよ求めるべきデータ量は、先のドットの数にこの時間刻みの数を掛けた、
19332*10^196
となります!これだけのデータを格納するだけでもリアルな人類の技術でできる範囲をはるかに凌駕しています。
より正確にはこの一つの「データ」の情報量なのですが、仮にある空間・時間上のドットに100バイトの情報量があったとすればこれに100を掛ければバイト単位でデータ量が求められます。
しかもすごいのは、このマトリックスの世界というのは少なくとも人の数だけはあるという仮説なのです。なぜなら、誰でも自分中心の世界が欲しいからです。人によっては好みの世界がいくつも欲しいので、場合によっては100個ぐらいシミュレーション宇宙を持っている人が(あちらの世界には)いるかもしれません。
これを考慮しても、巨大数の世界ではこの情報量はせいぜい「クラス2」で、仏教の世界の最大の数とされる不可説不可説転よりもはるかに小さい数なのです。
それほどまでに、巨大数の世界(クラス3以上)を少なくとも我々リアルな人類に想像するのは難しいのです。
巨大数の世界にはさらにその上のクラス4、クラス5・・・もあります。
リアルな我々が知性の面でいま目標とすべきは、この限界を(知的に)打破するということですね!