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コンサルタントはきょうも語る

現役経営コンサル兼ピアニストが仕事術とピアノと減量と英語と沖縄とかについて語ります

読書メモ:シルバー・デモクラシー~戦後世代の覚悟と責任~

現時点で自分なりの解決策を見出し自分が解決に参加したいと思っている深刻な問題が所謂「シルバー民主主義」もしくは「シルバー・デモクラシー」である。

先の大阪都構想の選挙結果、およびBrexitと呼ばれた英国の国民投票(その後英国はEU離脱、それもhard Brexitを表明しましたが)の背景にあるものとして、識者やメディアが声高に叫んでいたのも記憶に新しいとおもいます。

しかし「あれはシルバー・デモクラシーだ」「いやちがう」と議論のような議論でないような(すれ違った言い合い)になっているのは、そもそもシルバー民主主義の定義が一致していないからです。

様々な論考がある中で、当を得ていると思ったのがこのブログです:

ironna.jp

このブログにあるのは、高齢者の投票率が高いか否か、あるいは高齢者の人口に占める比率が高いか低いか、ではなく、「民主主義」(そもそも日本で民主主義が機能していないという見方もありますが)は単なる多数決ではないし、シルバー民主主義などといって思考停止すべきではない、という主張であるとぼくは解釈しました。そして思考停止すべきではない(思考停止したらアクションもとらないことになるので)という点では同意です。

 

つい先日、TVの論客としてお馴染み、博覧強記で舌鋒鋭い寺島実郎さんが、自らも戦後世代(昭和22年生まれ)であり、自責も含めて「高齢者」が何をすべきかを語った本を上梓すると聞き、折しも最も関心を持っている課題でもあるため、発売日に本屋に急ぎました。 

シルバー・デモクラシー――戦後世代の覚悟と責任 (岩波新書) | 寺島 実郎 |本 | 通販 | Amazon

 

この本の前半は実は著者が35年前に書いた論稿で、著者は自分が35年前に論じ警鐘を鳴らしたことを振り返ってどこが正しかったのかどこが誤っていたのかの検証から後半の本論が展開されます。

用語や表現が概ね難解ではあるものの、無意味に難解という訳ではなく、考え方や状況を正確かつ簡潔に伝えるための用語選択の結果と見做すべきでしょう。

たとえばこんな表現です:

  • 「(日本の民主主義は)代議制民主主義が機能せず、空疎な職業政治家の巣窟となっている」(これはそれほど難解でもないか)
  • 「(現代の日本人の行動様式が)多様な関心領域の中でのエッセンス消化型の行動様式」
  • 「(現代の世代のテーマは)たとえば政治的テーマに関していえば、「国家」を止揚し「個」を基軸にした社会構想をいかに現実たらしめるかというテーマが存在している」(これはやや難解ですね)
  • 「今後、戦後世代に求められるのは、諸課題を同時解決・達成するようなシステム的解決策なのである」(これは言葉は平易ですが、概念としては理解が難しいかもしれません)

著者が語るシルバー・デモクラシーとは、いまからわずか20年以内に65歳以上の高齢者(従来の定義、今は「准高齢者」も含みます)が人口の1/3を占め、この「高齢者」世代は全人口の貯蓄の56%、有価証券(株式、債券)の72%を保有している上に投票行動においても投票率が高く、したがってアベノミクスにおける1本目、2本目の矢の打ちまくりによる異次元金融緩和(日本のマネタリーベースはGDPとほぼ同額の400兆円強という世界的に見ても異常なまでの高水準)とその反面での3本目の矢(産業育成・振興)の不発、これにより経済学的に最も困難な課題である世代間資源配分を解決し得ない「シルバー・デモクラシーのパラドックス」がますます助長されつつあること、またそれをさらに深刻化させる都市高齢者の問題(下流老人への転落、コミュニティ不在)、この総体を指しているもので、単に高齢者の有効投票数が多いことでも、一部で提唱されている一票の重みを傾斜させること(実際には出来ないと思いますが)で解決するような問題ではないということです。

結論を書いてしまうとネタバレになってしまいますが、問題の記述も解決の方向性も納得できる部分がかなりあります。

まずは著者の言うところのシルバー・デモクラシーという問題の本質を理解する上でもぜひ一読いただきたい(批判的にかつ建設的に)良著です。