最初にこの曲に手をつけたのは中学生の頃だったのですが、当時はとても難しくて(今でも難しいですが)1楽章の途中までしか弾かないで終わってしまった記憶があります。
今の子達なら技術的には弾けるのでしょうが、「聴かせる」演奏はさすがにいくら早くても20代かもしれません(中には早熟な神童もいるかもしれませんが)。
まずはあちこちから拝借しながら曲目解説を。
シューマンのピアノ曲の中でも屈指の傑作で、1836年に着手されている。この曲は、リストが提唱した「ベートーヴェン記念碑建立募金」に寄付するために、「ベートーヴェン記念碑のためのオボルス(ギリシャ貨幣、寄付金の意):フロレスタンとオイゼビウスによる大ソナタ 作品12」と題して書き始められた。そして、1838年に曲は完成し、「幻想曲」という題名に変更され、作品番号17として1839年に出版された。
この曲は3楽章構成。もともとソナタとして作られたのですね。演奏時間は30分前後です。
第1楽章「どこまでも幻想的かつ熱情的に演奏する」ハ長調 4/4拍子
ベートーヴェンらしいソナタ形式で書かれているが、シューマン的な手法で展開される。楽章の終わりの方では、ベートーヴェンの歌曲「遙かなる恋人に」の一部が現れる。
第2楽章「中庸の速さで、どこまでも精力的に」変ホ長調 4/4拍子
当初この楽章には「凱旋門」という標題が付けられて、輝かしく壮大な行進曲となっている。
第3楽章「ゆるやかに演奏する。どこまでも穏やかに保つ」ハ長調
夢のように静かで、おだやかで、瞑想的な楽章。ベートーヴェンのピアノソナタ作品111 の終楽章を想起させるような曲だが、シューマン風のロマンティシズムに満ち溢れた曲である。
1楽章1ページ目(Henle版、2003年)。4行詩があります。シュレーゲルという詩人の作品ですね。これはシューマンが配したものです。
ドイツ語もう忘れてしまったorz
メカニカルにはこの2楽章の最後が最大の難所。
しかしいくらこの曲の作曲の経緯を知り、構成を把握しても、なぜこの曲が自分を虜にするかは説明できないのです。
かといってここで「言葉には表せない」としてはそもそも語る意味を否定してしまうので、作曲の経緯や構成以外の魅力を述べたいと思います。
どの楽章のモチーフも長いフレーズでかつシンプルであることが、この曲のスケールの大きさを作り上げるのに大きな役割を果たしています。
モチーフのシンプルさはしかしピアノという楽器で弾くことの難しさを却って際立たせます。ピアノは音をつなげることが原理的に苦手な楽器ですので、特に長いフレーズはピアニストの技量を試します。
これまではこの難しさが自分をしてこの曲に取り組むことを阻んできたのですが、ようやくここにきて少し自信が出てきたからこそこの曲の魅力と向き合うことができるようになったのだと思います。
もう一つのいまの自分にとっての魅力はロマン派らしい作品であることかと思います。
スクリャービンやシマノフスキ、ラベルなど近現代中心に取り組んできたので、自分にとっても聴く人にとってもわかりやすい曲への渇望が表面に出てきたかのように思います。
難しい曲ですが、自分のこの曲への想いを聴く人と共有できるような演奏を目指します。
この曲への深い想いをブログで語ってくれている人がいるのもうれしいです。
充実したサイトを2つご紹介します。
音源の紹介も充実していてとてもいいですね!
もうひとつはピアノの先生のブログから:
ぼく個人が好きな演奏はイギリスの稀代のピアニストClifford Curzonのものです。
もう何十回も繰り返し聴いています。品格と規律がありメカニカルにも完璧です。