コンサルタント=ピアニスト=ランナーはきょうも語る

現役経営コンサル兼ピアニストがランニングと仕事術とピアノと英語とかについて語ります

ビジネスの武器としての数学

昨年あたりからデータ・アナリティクス、データ・サイエンティストといった言葉が飛び交うようになっているビジネスの世界だが、もともと大学・大学院で信頼性解析(統計の一分野)をやっており、米国のビジネススクール(MBA)に留学し2年目の選択科目ではオペレーションズ系の科目を好んで履修していた自分からすると、「やっときたか」という気がする。

大学院時代は、地震とか風に対する建築物・構造物の被害を最小化する研究をする研究室にいたので、地震とか風といった外力を定量化する必要があったのだが、こういった自然災害の発生頻度と強さ(地震の場合はマグニチュードが代表的)の確率分布は、よく使う正規分布(釣鐘型の分布、ベルカーブ)ではなく、ワイブル分布など極値分布という確率密度関数を使う。また、シミュレーションのために人工的な地震波を作成する際にはフーリエ変換を使っていた。また、風はさらにナビエ=ストークス方程式などさらに高度な数式を使っていた。

ファイナンスの理論でも、基本的な統計理論を超えて、たとえば金融商品であるオプションの価格は、ブラック=ショールズ式という、確率微分方程式に基づき定式化された理論で決定する(これ以外にもあるが、最も基本的なオプションはブラック=ショールズ式を使う)。クオンツ達には常識であるが。

保険数理も高度な数学を駆使する。アクチュアリー(保険数理士)という資格があり、生命保険会社や損害保険会社で重用される人材は、数学が得意でないと務まらない。ぼくもかつてアクチュアリーになりたくて試験勉強をしていた頃があるが、難しかった。

コンサルタントとしてお付合いのある医療の世界では、実は一般の事業会社で使っている統計理論より先を行っている。たとえば医薬品の臨床開発においては、有効性を立証するために、検定を使う。また、最近実用に供されるようになってきているベイズ推定という理論も、医薬品開発に応用されるようになってきている。

ビジネスの世界では、コールセンターやロジスティクス(物流)では待ち行列理論等高度な数学が使われている。

一方で、経営管理においては、未だにほとんどが四則演算の世界である。せいぜい使うとしても線形回帰ぐらいである。同じ会社の研究所ではきわめて高度な数学が使われていても、管理部門では初歩的な数学どまりである。

最近流行のビッグデータ分析では、スパースモデリング(sparse modeling)が使われているようだ。これは医療機器の開発にも使われている。

自分は使ったことはないのだけれど、グラフ理論整数論(インターネットのセキュリティに使われている)もまだまだビジネスの実務に活用の余地があるのではないか。

本来であれば解くべき問題が先にあって、それを解くのにどういう方法があるかを探す、という順序だが、逆にこういう数式やこういう理論を使えば、今まで解けなかった問題が定式化、定量化できる、という視点もあってもいいのではないか。

そういう本を探しているのだが、いわゆる「ビジネス数学」ものの本は、あまり高度な理論を扱ってくれないので(たぶん売れなくなるからだと思うが)、早く出てくれないかと期待している。