医療の情報公開は実はとても進んでいます。
昨年秋、厚生労働省は医療機関が提出を義務付けられている診療データをまとめて一挙公開しました。
このデータは、診療報酬に関する情報、すなわち医科と歯科における初診、再診、入院基本料、管理料、手術料、薬剤費などが都道府県別、性別、年齢階級別(5歳刻み)で把握できるものです。
これをきちんと分析すれば、どこでどれだけの診療が行なわれ、何に費用がかかっているかを把握することができます。
薬剤費について分析を始めたところなのですが、このデータがまた膨大です。
データはすべてExcelでダウンロードできるのですが、このように公開されています:
薬剤
内服のデータについて一部修正がありましたので、再掲載いたします。 (28.10.14)
内服 外来(院内) 性年齢別薬効分類別数量[820KB]
内服 外来(院内) 都道府県別薬効分類別数量[948KB]
内服 外来(院外) 性年齢別薬効分類別数量[852KB]
内服 外来(院外)都道府県別薬効分類別数量[1,007KB]
内服 入院 性年齢別薬効分類別数量[766KB]
内服 入院 都道府県別薬効分類別数量[874KB]
外用 性年齢別薬効分類別数量[810KB]
外用 都道府県別薬効分類別数量[883KB]
注射 性年齢別薬効分類別数量[1,250KB]
注射 都道府県別薬効分類別数量[1,397KB]
都道府県別に分析するか性年齢別に分析するかは選ばなければならないのですが、一つの目的は高齢者にどれだけの薬剤費が集中しているかを見ることなので、性年齢別のデータ、つまり上のなかから5つのシートをダウンロードし一つのシートにマージしました。
48列×13,473行のデータになりました。
薬剤費は薬価(公定価格)と数量に分けて表示されているので、各薬剤の総額を出し、70歳以上の薬剤費の全体約7兆円に占める割合を計算すると、49%となりました。全体の半分は70歳以上が占めるということです。
しかしこれはあくまでも薬価ベースなので、公的負担ベースでみるともっと高齢者の割合は高くなります。70歳未満は3割負担ですが、70歳以上は2割もしくは1割負担だからです(特定疾患などまた別のケースもありますがこのデータからはわからないです)。
次に、薬剤別にどの薬が最も使われているかを金額ベースでみるとこんな感じです。
医薬品名 | 総額 |
プラビックス錠75mg | 107,948,606,517 |
レミケード点滴静注用100 100mg | 78,530,731,268 |
クレストール錠2.5mg | 68,293,791,536 |
ネキシウムカプセル20mg | 65,292,970,667 |
オルメテック錠20mg | 63,980,587,109 |
ジャヌビア錠50mg | 60,260,081,693 |
アバスチン点滴静注用400mg/16mL | 58,363,016,308 |
ゼチーア錠10mg | 52,903,623,506 |
ミカルディス錠40mg | 51,730,560,392 |
モーラステープL40mg 10cm×14cm |
49,680,214,484 |
プラビックス錠75mgが一位でおよそ1,000億円です(薬価ベース)。
ここにプラビックスの説明がありますが、抗血小板剤、すなわち血が固まらないようにする薬です。血が固まることで起こる血管障害を治療もしくは予防する需要がそれだけ高いということです。
ただしプラビックスには75mgだけでなく25mgもあるので、合せると1,200億円ぐらいになります。
また、これはこれから分析するのですが、個別の薬剤別だけではなく、たとえば中枢神経系の薬剤費はどの程度でどの年齢層で多く使われているか、といった疾病別×年齢階級別の分析も可能ですし、新薬と後発品(ジェネリック)の金額ベースでの比率はどの程度かという分析もできます。
厚労省がたびたび公表しているジェネリックの使用割合というのはあくまでもジェネリックが存在する医薬品の有効成分について、数量ベースで集計しているものなので(しかも数年前に算出方法を変えましたね・・・)金額ベースではもっとずっと低い割合になる筈です。
今回は第1回の発表なので、今年、来年と時系列で追っていくと増減もみることができます。
自分の仕事にも活用していきたいと思っています。