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LTTバイオファーマに注目しています

LTTバイオファーマという日本のバイオベンチャーは、他の多くのバイオベンチャーの例にもれず業績的には苦戦しているものの、その戦略的方向性は医薬品業界の進むべき方向を直接的にアドレスしている点で注目すべき企業だとおもいます。

www.ltt.co.jp

進むべき方向とは何かというと、既存薬の見直しによる新たな治療法の確立です。ドラッグ・リポジショニングである。会長の水島徹氏は慶應医学部教授で、日本におけるドラッグ・リポジショニングの主唱者のひとりでもあります。

LTTバイオファーマはDDS(drug delivery system、薬物送達システム)とDR(drug repositioning、既存薬再開発)を事業の2本の柱としています。

このうちDRについては、同社ウェブサイトに判り易い解説があります。

http://www.ltt.co.jp/rd/dr.html

ここではDRの利点として:

  1. 確実性: 副作用で臨床試験が中止するリスクが低い
  2. 低コスト: 既にあるデータを活用できるのでコスト・時間が削減できる
  3. 有効性: インシリコ(コンピュータ上)でのスクリーニングが可能

の3つを挙げていますが、いずれも「新薬開発は金と時間がかかりリスクが高い」という支配的な認識を覆すものです。

ただし、経済的・社会的にこれほど大きな意義のあるDRは、新しいもの、画期的なものを好む(というよりそれがモチベーションになる)現場の研究者にとっては「つまらないもの」なのでしょう。このマインドセットが現場にあるとなかなか進まないという側面もあるかもしれません。

業界誌に取り上げていただいた私の論稿にも、ドラッグ・リポジショニングは、新薬創出に苦しむ日本のみならず世界の医薬品メーカーにとって採るべき戦略オプションであると述べたのですが、実際には各社の成長鈍化を克服するには未だ至っていない状況です。

LTTバイオファーマが際立っているのは、シーズありきなど技術ドリブンで立ち上げられた他のバイオベンチャーとは異なり、この長期的に正しい方向性を明示的に指向していることです。

国のファンド、民間のファンド、いずれもヘルスケア領域には強い関心を示し、(小規模ながら)投資していますが、投資先を見極める上で、医薬品業界の事業特性および事業環境の変化を見据えた視点が欠如しているように思えてなりません。

このように長期的に正しい方向性を指向し、かつ小さいながらも実績をあげているバイオベンチャーにこそ投資すべきではないのでしょうか。

LTTバイオファーマは上場していたのですが、2011年に上場廃止になっています)

実際に投資するにあたって様々な思惑はあるでしょうが、それでも彼らファンドの現投資先には首を傾げざるを得ないものも散見します。

ファンドとして医薬品を投資対象とし、かつ当然ながら中長期的なバリューアップを望むのであれば、当然投資対象の筆頭候補に挙げられるべき企業であると思っています。