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配置薬業界・企業はどうなるのか

配置用医薬品とは、いわゆる「富山の薬売り」が各家庭(あるいは事業所)に薬箱を設置し、定期的に薬の補充をする訪問販売形式の医薬品のことです。

江戸時代に、前田藩2代目藩主の令を発端に成長の礎が築かれたこの日本独特の業界セグメントですが、ドラッグストアを主とする流通の多様化により、その市場規模は縮小の一途を辿っています。平成7年(1995年)の663億円をピーク(薬事工業生産動態年報の生産金額ベース)に、直近の平成25年(2013年)はその1/3の226億円まで、CAGR▲5.5%の縮小市場となっています。

富山県は配置用医薬品生産金額の5割を占めるほど集中が進んでおり、また富山県自体大手医薬品メーカー(新薬・後発薬共に)が生産拠点を構える医薬品生産のメッカです(一昨年、県別医薬品生産高で富山県が、これまでずっと首位を守ってきた静岡県を抜いて首位になりました)。

配置用医薬品市場がこのように長期縮小傾向にあること、また配置用医薬品メーカーがせいぜい数十億円規模の事業規模で収益性も低く、またR&D投資もままならないことから、特に近隣の企業同士の合従連衡による事業基盤強化が待たれる業界となっています。

配置用医薬品はいわゆる大衆薬(一般医用医薬品、もしくはOTC)とは別の市場セグメントですが、政府・厚労省が進める医療費削減は、いわゆる消費者主体のセルフ・メディケーションの流れで、縮小傾向に歯止めがかかるポテンシャルもあります(OTCは漢方を除き長期縮小傾向)。

訪問販売という形態が高齢社会における家庭向け健康支援に適したものであることから、今後に期待する声もありますが、しかしそれも小規模な事業体ではなかなか事業モデル転換による事業転換が難しいとみられ、前述の合従連衡も単にスケールメリットを狙ったM&A(医薬品生産の場合生産のスケールメリットは効きにくい)を超えて、このように新たな戦略的方向性を共有した形のものであれば十分に意義はあると思われます。

医薬品業界は、高齢者人口の増加と公的医療保険制度における薬価政策によって堅調な成長を遂げてきておりましたが、規制緩和や、大型医薬品の特許失効による2010年問題と2015年問題、さらにここにきて医療費抑制の為の各種施策により、成長の前提と業界の本質的な限界が露呈し、(前臨床、臨床)開発支援や配置薬といった、医薬品関連業種の中でも特に影響を受けた業種が売上・利益両面でマイナス成長になり、危機が訪れている企業も少なからず出てきました。医薬品業界の構造変化が本格的に始まり、「戦略」の必要性が高まってきたと言えるとおもいます。