昨日は日本音楽コンクールピアノ部門2次予選(正式には第2予選と言うそうですが)第1日を聴きに行きました。
1次予選の結果をみて、これは楽しみだと思ったからです。
午前中は1件クライアント訪問があったので聴けなかったのですが、なんとか4人目から10名ほど聴くことができました。
第1日目の演奏順はこちら:
聴くことができたのは橋本さんから古田さんまでです。
16 橋本健太郎
24 山中惇史
35 勝元和花奈
39 竹澤勇人
43 伊藤ゆり
45 横山瑠佳
54 横江智至
55 香月すみれ
58 山﨑亮汰
64 古田友哉
私は審査員ではないし、また仮に審査員であっても評価は他言無用なのであえて各人の演奏については述べませんが、今回音コンの1次、2次を聴いて自分の学びとして多くのものを得ましたので、いくつかポイントを書いてみます。
- これだけのレベルの参加者であっても、ピアノの「基本」が忠実にできている演奏は説得力がある(し実際に予選通過している)
- フレーズの閉じ方、調整と色彩の変化、カデンツの扱い、ボイシング(出すべきラインを明確に)、といったディテール(といっても決して小さなことではありませんが)ができている人とできていない人がはっきりしている
- メカニカルに難しい曲になると弾くことに精一杯になってしまっているのは選曲ミスなのか練習不足なのかいずれにしても「聴かせる」ということを念頭に置くことが大切
- コンクールとはいえ公開演奏、しかもトッパンホールというすばらしいステージなのだから、もう少し楽しむ雰囲気が感じられてもよかったのではないか
あえて昨日聴いた中でのtop pickを挙げるとすれば、文句なく山崎亮汰さんです。
日本音コンだけでなく、この夏聴いたコンペすべてを通してにこやかにステージ挨拶をしたのは彼だけです。
山崎くんは急いで弾き始めることなく、十分に時間をとって呼吸と精神を整えます。
そして客席に聴こえるほどたっぷり息を吐きながらショパンのバラード1番のあの印象的な冒頭を弾き始めます。この冒頭のAs-durで始まるユニゾンは決して単調に同じバランスで弾いてはならないことをさすが理解され、聴衆の集中を高めるイントロとして効果抜群でした。
緻密に設計され丁寧に練習しかつ大胆であるべきところは大胆に、この有名曲をコンクールで弾くこと自体怖いことですが、完全に楽曲を自家薬籠中のものとしたと言える演奏でした。
2次予選ではフランス近代作曲家の演奏が求められるのですが、この課題で定番と言えるラベルのスカルボやトッカータ、ドビュッシーの花火が並ぶ中、彼はドビュッシーのベルガマスク組曲からメヌエットという一見すると「弱い」選曲で臨みましたが、様式感を示すには十分であり、また端正な演奏でこれもとてもよかったです。
最後はスクリャービンのエチュード作品8の12。これはうってかわって激しい曲ですが、その対照も見事でした。3曲通じてほぼノーミスであるどころかプログラム構成も性格の弾き分けも十分、かつとても丁寧な演奏であったことですから、ぜひ通過を期待したいところです(しかし2日目、3日目の他のコンテスタントもすばらしいかもしれませんし、あくまでも審査員団が決めることです)。
3次予選は9/12(火)です。聴きにいきたいなー。