コンサルタント=ピアニスト=ランナーはきょうも語る

現役経営コンサル兼ピアニストがランニングと仕事術とピアノと英語とかについて語ります

スクリャービン エチュード作品42第5番嬰ハ短調

突如必要が生じて練習することになった。

10年ほど前に取組かけたことがあったが、優先順位をかなり下げたままほとんど手をつけず放置していた。

あらためて楽曲分析から始めている。

全体の構成は、終曲に向けて波状攻撃的に盛り上げていく(黒ミサ、焔に向かってなど)、スクリャービンが好んで用いた形式で、方向が定まらず不安感を募らせる苦悶の主題Aと、悲嘆にくれる哀歌のような主題Bが変奏され交互に現れるシンプルな構成をとっている。

この曲の難しさは、左手のコサックと言われたスクリャービンの高い要求に応えるように、左手の分散和音は流れるように滑らかに、手の都合、技術的な未熟さ故に不要なアクセントをつけたり、強くなり過ぎないようにすることである。特にppの箇所で右手の旋律を邪魔するようなことがあってはならない。

最初に主題が出現するときはよいのだが、変奏では内声にショパンエチュード10-6のような声部を上品に決して主張しすぎることなく名脇役として奏し主旋律を引き立たせなければならなかったり、和音のボイシングも極めて繊細で高度なものが要求されるなど、音楽が要求するメカニックにはきわめて高度なものが次々に求められる難曲である。

これらの要求を、音楽の正確な理解に基づききちんと聴衆にそれと認識できるように演奏することは至難の業であり、それ故にアマチュア(プロですら)の演奏には平板であったり、コーダの盛り上げ前に頂点に達してしまい作曲家の意図した形式どおりに演奏できないなど、問題が多発する。

そもそもこの曲をppでかすれず美しく立体的に弾くことがまずできなくてはならない。むしろfやffの方がよほど楽である。したがって冒頭で奏者の腕前がわかってしまう曲でもある。