シリーズが進むにつれ難度が増すコンサルの技シリーズ。
連載13回目ともなると、もはやこの段階になると従来のコンサルという範疇では語れない。
コンサルタントが苦手であることが多い異才のレバレッジである。
コンサル業界に長くいると、クライアントは様々な業種にわたり様々な職種の方々と接することは多いのだが、密に仕事するチームはとても均質な人種である。
言語も行動様式も同じなので、意志も伝わりやすく行動も予測しやすい。
これに対して、別の道で一流の方々とは共通言語もなく、それぞれに違う思考パターンと行動様式で(しかもかなり違う)ため、「チーム」として動くのははなはだ困難であることが多い。
いくらこちらが当たり前だと思っても、それはあくまでこちらの価値観であり、押し付けてはならない。
その道で日本一、いや世界一の異才の方々の多くに共通するのは、チームプレイヤーではないどころか、その対極にいるマーベリック(maverick、一匹狼)タイプの考え方と行動様式であり、そもそも同じ世界にいる人ですら一緒に働くのが難しいタイプであることである。たとえ共通言語を持っていても、そのような方々は答が見えてしまっているため、圧倒的に行動が速い。したがって同じ世界の人でも「ついていけない」のである。いわゆる俗にいうところの「孤高の天才」なのである。プライドも高いため、プライドを傷つけないよう細心の注意も必要である。
しかし一流のコンサルタントたるもの、そしてイノベーションを創出することが求められる局面では、「オーケストレーター」としての役割を担い、このような「孤高の天才」の能力をも最大限レバレッジして成果を出すことが求められるのである。
俗な言い方をすれば「傾聴」も必要だが、アクティブな傾聴が必要である。ただ相手の話にうなづいていれば傾聴になる訳ではない。双方向のコミュニケーションの手段としての傾聴である。
実はこのような孤高の天才とでも、高い次元で共鳴できることがある。こちらも超一流の、その道のプロである以上、プロフェッショナルとして結果を出すことにかけては、あるいはその前に問題解決にあたってのアプローチには、共通する部分がある。ただ分野が異なるだけで、アプローチは共通する場合がある。この共通部分を見出すには、正しい抽象化と相対化が求められる。これが今回のメッセージである。