コンサルタント=ピアニスト=ランナーはきょうも語る

現役経営コンサル兼ピアニストがランニングと仕事術とピアノと英語とかについて語ります

国連という組織はコンサルを燃えさせる

こんな記事がある。

「70年と0.5兆ドル後に国連は何を成し遂げたのか」
https://www.theguardian.com/world/2015/sep/07/what-has-the-un-achieved-united-nations

 

そもそも国連(UN, United Nations)は何のためにあるのか。公式には第三次大戦を未然に防ぐためであり、第二次大戦を防げなかった国際連盟(League of Nations)の発展的解消である。この大義に誰も異論を唱えないであろう。

 

しかし1945年に設立されて70年が経ち(この記事は2015年のもの)、5,000億ドル(約55兆円)を費やした国連が何を成し遂げたというのか、国連による世界の平和と安定への貢献がこの金額に見合うものがあるのか、確かに何百万人の生命を救ったことは認めるものの、一方で官僚的で腐敗した巨大組織になってしまったのではないか、とこの英国Guardianの記事は述べている。

 

痛烈な批判である。

 

歴代の事務総長(Secretary General)の中でも最も評価が高いとされるハマーショルド(Hammarskjöld)は、国連は何のために創られたのかという問いに対して:

The United Nations was created not to lead mankind to heaven but to save humanity from hell.

と答えたという。

設立当時、このhell(地獄)が何を意味していたかを問う必要はどこにもなかった。戦禍である。それは誰の目にも明らかであった。

戦争以外にも地獄はある。たとえば貧困、飢餓、病気がそうである。

国連は途上国における貧困、飢餓、病気の撲滅において多大な貢献をしてきた。

たとえばWHOはかつて世界中で人類の脅威であった天然痘(smallpox)を撲滅させた(eradicated)。1980年にWHOは天然痘撲滅宣言を出している。天然痘は人間の意図的な努力によって撲滅された最初の伝染病とされている。

一方でWHOは、Congo等でもEbolaウィルス感染拡大を防げなかったとして批判されてもいる。

されどWHOはグローバルに医療の標準とされている国際疾病分類を作成・更新するなど、その活動は医療と密接に結びついている。

また、第7代事務総長であるKofi Annanがグローバル医薬品メーカーのトップを集めて、アフリカにおけるHIV対応を促した(つまり抗HIV薬の価格を下げなさい)ことも国連にしかできないことである(FDAやEMAにできることではない)。

WHOの貢献は多くの国連機関の中でも明確なものであろう。

他の国連機関の貢献はWHOほど明確ではなく、そして仮に貢献があったとしても計測することは難しい。

より判りやすいのは国連に勤務する職員の数、予算の膨張である。この記事はかなり仔細にそれを述べている。これについて数字をとり批判するのは容易である。確かにある程度国連組織が肥大化し、民間企業に較べると非効率、非生産的であることは確かであろう。そして国連改革は国連の歴史において何度も唱えられ実行されている(らしい)が、その成果もみえにくい。前事務総長のBan Ki-moonによると「かなり変わってきている」というが、国連基準では変わってきているとしても、客観的にはそうではないかもしれない。

 

こういう組織を目にするとコンサル根性がうずく。燃える

ガバナンスの不在、組織としてのビジョンの欠如(理念はビジョンとは異なる)、業務非効率、といった問題はいずれもみたら解決したくなってしまうものばかりだ。

国連史上最もオープンに選出された現事務総長Antonio Gutiérrezには大いに期待している。彼だったらプロジェクトオーナーになれるかもしれない(会ったことはないが)。