今回から個々の楽曲解説を試みる。今回は1番から4番まで。
参考にさせていただいたサイトは④に記載している。
第1番 ハ長調(C major) Agitato、8分の2拍子、34小節
前奏曲集の第1曲として如何にも前奏曲あるいは序曲的な色彩の強い曲。
左手の三連符に導かれ、右手で待ちこがれるような(コルトーはこの曲を「愛する人への熱き予感/期待(Feverish anticipation of loved ones)、ハンス・フォン・ビューローは「再会(Reunion)」と評した)旋律が歌われる。ショパンが尊敬するJ.S.バッハの平均律クラヴィーア曲集第1巻第1曲を彷彿とさせる(のは当然なのだが)。
この曲はバスのラインももちろん重要で、四声体として演奏しなければならない。何気なく弾き流さず、立体的な音楽をつくることを心がける。ショパンならではの転調を色彩の変化豊かに表現するのも言わずもがなである。
第2番 イ短調(A minor)Lento、2分の2拍子、23小節
息の長い旋律が、刺繍音を多用したバス上に歌われる。
イ短調であるがドミナントのホ短調で始まり、転調を繰り返しながら最後の最後でイ短調に収束する。コルトーはこの曲を「痛切な瞑想、遠くの荒れた海(Painful meditation; the distant, deserted sea...)」と評し、ビューローは「死の予感(Presentiment of death)」と評した。
左手は大きければ楽に弾けるというものではなく、ボイシング(voicing)が出来ていないと単なる象の行進みたいに単調になってしまうので注意。
第3番 ト長調(G major) Vivace、2分の2拍子、33小節
小川のささやきと評される(コルトー:The singing of the stream)軽快な曲である。
左手の16分音符のパッセージはよどみなく弾きたい。軽快さ・快活さ(Vivaceなので)を失うことなく、決してペダルに過度に頼らないように。そのためには指の独立と柔らかな手首の動きのコーディネーションは欠かせない。決してやさしくはない。
ちなみにビューローは「汝は花の如し(Thou Art So Like a Flower)」と評した。
第4番 ホ短調(E minor) Largo、2分の2拍子、26小節
単調な右手の旋律を左手の半音階的に転調する和声が支えている。この転調がショパンならではの見事なもの。繊細な色彩の変化が難しい。
作曲者の葬儀の際、第6番と共にルイ・ジェームズ・アルフレッド・ルフェビュール=ヴェリーがオルガンで演奏した。コルトーには「墓場の上に(Above a grave)」と評され、バローには「息苦しさ(Suffocation)」と評されている。