ここのところ1ヶ月半にわたり、自分にとって究極のピアノソロ作品であるショパン前奏曲集作品28について書いてきているが、実際に弾く前に知るべきこと、意識すべきこと、考えるべきことが多過ぎるので研究を継続している。
8年ほど前にこの曲集はひととおり練習し、レッスンやコンサートでも弾いたので、今でもほぼ一応暗譜はしているが、今にして思えば如何に自分の楽曲の理解が浅かったかを痛感するゆえ、ピアノに向かう以外に、作曲の背景、和声や旋法の理解に基づきアナリーゼした上で、アゴーギクやペダリングといった奏法上の重要な側面も徹底的に検討しなければならない。それが楽曲に対する誠実なあり方だと思うからだ。
前回に引き続き、ペダリングについて書く。
雑誌「ショパン」1997年8月号に、ハワイ大学ピアノ科主任教授(当時)ピーター・コラッジオ氏が「ショパンは少なくとも24通りのダンパーペダルの使い方を生徒に示した」という記事を書いている。
最も一般的な(そしてほとんどの人はこれしか使わない)ペダリングは、シンコペーション・ペダリングであり、これは打鍵した直後に踏むもの。
この他のペダリングには、例えば音をつなぐためのレガートペダル(譜例は20番)、非常に音を際立てるため打鍵と同時に踏むトレッド・ペダル(これは私はショパンエチュード25-5のレッスンで教わった。譜例は12番)、ハーフ・ダンピング(14番)、ハーフ・ペダリング(15番)などが主なものである。
ただし、筆者もここで述べているし、よく言われることだが、ペダリングは「耳で踏む」ものであり、形から入るべきものではない。
重要なのは、ペダルはオンとオフのデジタルではなく無段階変速機のように連続的なものであることと、あくまで曲想が求める音を響を作るための手段(しかし極めて重要な。ショパンはダンパーペダルをピアノの真髄と言ったとか)である。