遠藤郁子はショパン弾きとして知られるピアニスト。第7回ショパン国際ピアノコンクール(1965年)で「特別銀賞」を受賞している。
彼女はショパンの録音を多く残しているが、前奏曲集作品28&作品45のアルバムは「春夏秋冬」と題している。
ジャケットは「和」である。
そして彼女は、各曲に自身による副題をつけている。いずれも北海道が舞台である。彼女は東京に生まれているが、幼少時に北海道に移住している。
各曲の副題は以下のとおり(Amazonサイトより):
1番 ハ長調 Op.28-1“日の出とともに里に舞い降りる鶴”(冬)
2番 イ短調 Op.28-2“鯉の墓場”(晩秋)
3番 ト長調 Op.28-3“雪どけ川を下る鮭の稚魚たち”(早春)
4番 ホ短調 Op.28-4“瀕死の白鳥”(早春)
5番 ニ長調 Op.28-5“6月の風にゆれるアカシヤの花”(初夏)
6番 ロ短調 Op.28-6“雨のアイヌ墓地にて。ひっそりと咲く一輪のクロユリ”(初夏)
7番 イ長調 Op.28-7“雨露をころがす鈴蘭”(初夏)
8番 嬰ヘ短調 Op.28-8“ニングルの住む森のこがらし”(秋)
9番 ホ長調 Op.28-9“オホーツク海の真赤な日の出”(夏)
10番 嬰ハ短調 Op.28-10“釣り糸に踊る落部川のヤマメ”(初夏)
11番 ロ長調 Op.28-11“ルピナスの花とピリカ・メンコ”(初夏)
12番 嬰ト短調 Op.28-12“イヨマンテの剣の舞”(晩秋)
13番 嬰ヘ長調 Op.28-13“青い空、海辺のハマナス”(夏)
14番 変ホ短調 Op.28-14“カムイコタンの急流”(夏)
15番 変ニ長調 Op.28-15“太古の原生林。ものの気。雨だれ”(秋)
16番 変ロ短調 Op.28-16“駒ヶ岳の伝説。空翔ける光の剣”(夏)
17番 変イ長調 Op.28-17“春の宵の逢瀬、闇夜に響く11時の別れの鐘”(春)
18番 ヘ短調 Op.28-18“運命が戸をたたく。諾か否か、不吉な知らせ”(晩秋)
19番 変ホ長調 Op.28-19“緑響く。大雪山の樹海”(盛夏)
20番 ハ短調 Op.28-20“キロロアンの死”(冬)
21番 変ロ長調 Op.28-21“澄みわたった空、水辺の真赤なサンゴソウ”(秋)
22番 ト短調 Op.28-22“走る白い野生の馬”(夏)
23番 ヘ長調 Op.28-23“水ぬるむ頃、ぽっと開くふきのとう”(早春)
24番 ニ短調 Op.28-24“コタンの殺戮。放たれた火、女たちの悲鳴、やり場のない怒り”(厳冬)
遠藤郁子氏は、このアルバムに先立ち、1995年に「序破急幻」というアルバムをリリース、さらに2年後の1998年にはポロネーズを収めた「空風火水地」と、徹底して和の基調で統一している。
これは筆者の想像だが、ショパンに身を捧げ、ポーランドに暮らしたこともある彼女は、きっと日本人ショパン弾きとしてのアイデンティティを真剣に追求していたことがこれらアルバムに表出したのであろうと思う。
まだ聴いていないので、とりあえず前奏曲集は購入して聴いてみようと思う。
なお、氏は「音霊の詩人」という書も著している。こちらは一度通読したが、強烈な内容である。ぜひ読まれることをお勧めする。