自分がある本を手にするかの基準には、「超」「最強」の他に、「科学する」とタイトルにあるものは手にしないというものがあるのだが、例外的に読んでみた。
というのは、レビューを見て、これは読むに値するかもしれないと思わせる、本書のユニークなアプローチに興味を惹かれたからである。
音楽の感動を科学する ヒトはなぜ“ホモ・カントゥス"になったのか (DOJIN選書35)
- 作者: 福井一
- 出版社/メーカー: 化学同人
- 発売日: 2010/10/01
- メディア: 単行本
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もう一つの理由は、この著者が自分が留学していたのと同じ大学への留学経験があり、学部は違うがこの大学は音楽でも有名な学校だからである。
副題にあるホモ・カントゥスはカントゥスが音楽なので、まさに音楽するヒト、であるが、著者は一見多様に見える音楽にも共通性・普遍性があるとしてこの言葉を用いている。その共通性・普遍性とは何かを論理的に紐解いていくのがこの図書の思考実験である。
ちなみに、思考実験というとあまり重要に思われない向きもあるが、思考実験ことが知性の重要な発現形態であると自分は信じているし、日々様々な思考実験を仕事において行っている。それは通常は仮説構築と呼ぶものである。
そして、著者もこのホモ・カントゥスが仮説であると明言しており、本書のp.240にダイアグラムを記載している。
また、古代ギリシャにおいて音楽はそもそも科学であったことについても当然著者は言及している。そして実際に、古代ギリシャにおいて音楽は幾何学とならび数学であったのだ。
これは音楽を愛する方であれば一読に値する貴重な「科学する」本である。