コンサルタント=ピアニスト=ランナーはきょうも語る

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【読書メモ】日本人も知らなかった日本の国力(ソフトパワー)

目下参画している社外研究会の活動の一環としてソフトパワーに関する文献調査をしていたところ、標記の図書に出会った。大変参考になったので、次回研究会の会合の際にメンバーに内容と共に共有することにする。

 

日本人も知らなかった日本の国力(ソフトパワー)

日本人も知らなかった日本の国力(ソフトパワー)

 

 

著者は川口盛之助さんという自称未来学者。氏のウェブサイトにはこのような自己紹介がある:

株式会社 盛之助代表。慶応義塾大学工学部卒、米イリノイ大学理学部修士課程修了。日立製作所を経てアーサー・D・リトルに参画。各種業界の戦略立案プロジェクトに広く携わり、同社アソシエート・ディレクターを務めたのちに、株式会社盛之助を設立。国内のみならずアジア~中東各国の政府機関からの招聘を受け、イノベーションブランディングに関するコンサルティングを行う。技術とカルチャーを体系的に紐付けたユニークな方法論を展開し、著作「オタクで女の子な国のモノづくり」は「日経BizTech図書賞」を受賞。世界4か国語にも翻訳される。近著「メガトレンド」シリーズでは、精緻で広範な未来予測の方法論を展開し、ビジョナリストとして各界で高い評価を受ける。同書の世界観をベースにした文部科学省の将来社会ビジョン策定プロジェクトや、自由民主党の「国家戦略本部」 におけるビジョン策定などにも携わる。

戦略コンサルティングファームのアーサー・D・リトル・ジャパンでアソシエート・ディレクターを務めたのちに(株)盛之助を設立。国内のみならずアジア各国の政府機関からの招聘を受け、研究開発戦略や商品開発戦略などのコンサルティングを行う。近「メガトレンド 2014-2023」では、独自の方法論から導き出す精緻で広範な未来予測分析を行い、各界で高い評価を受ける。同書の世界観をベースにした文科省の将来社会ビジョン策定プロジェクトや、自民党「国家戦略本部」 におけるビジョン策定などにも携わる。

 

もともとは戦略コンサルタントとして同業であり、未来予測を得意とされているというところに親近感を感じる。

それはさておき、氏はGNT(Gross National Talent)という新たな概念を提唱し、またこの書において定量化と国際比較を試みておられる。意欲的である。

 

まえがきの冒頭にこうある:

「本書は、さまざまな専門分野における才人たちの活躍ぶりについて国籍別に定量分析を行なうことにより、日本の「お国柄の可視化」を試みた、まったく新しい日本文化論です」とある。

おもしろい。

また、日本が必ずしも得意でない分野でどのようにしのぐか、その「処し方」が9パターンあると喝破しているところもすばらしいです。

それら処し方とは:

  1. 非力ゆえ正面対決を避ける:「柔よく剛を制す」作戦
  2. 前に出ず、裏方さんの「大道具役」を担う:「草鞋を作る」作戦
  3. 外国語の不利を、言語価値を希釈することで解決する:「非言語化」作戦
  4. 競合が少ないうちに早期参入する:「サブカル流行先取り」作戦
  5. 金儲け色が強くなると食傷気味になって撤退:独り遊びに走る「オタク趣味人」作戦
  6. 勝ち方や競技自体の趣旨に美学を求める:「武士道」作戦
  7. エリートよりも一般市民のレベルの高さで勝つ:「民度で勝負」作戦
  8. 牽制し合う欧州と米国の両方で活躍してポイントを稼ぐ「ノンポリ二股」作戦
  9. どの分野にも首を突っ込み総合成績で勝つ:「子供のような好奇心」作戦

巻末のまとめには、GNT評価結果があり、25か国の国別のランキングが分野別と総合点で表になっている。

上位10位は、1位米国、2位英国、3位フランス、4位ドイツ、5位日本、6位カナダ、7位オーストラリア、8位イタリア、9位スイス、10位スペインという結果になっている。

GDPのようなハードパワー的指標と対照的な内容でありながら、経済大国が上位に来るのはまぁ当然と言えば当然であろう。

 

自分が参画する研究会ではしかし、このような指標よりも上記の「処し方」の方が重要である。そして、個々の分野で勝つか負けるかではなく、国として国際社会に影響力を行使することができるかがテーマなので、この書にある分析を一つの材料として参考にしつつも、「で、どうする」を提言しなければならない。