コンサルタント=ピアニスト=ランナーはきょうも語る

現役経営コンサル兼ピアニストがランニングと仕事術とピアノと英語とかについて語ります

保型形式という奇跡

先々週の土曜日のこと、忙しい1週間を乗り切り、体調も急回復したので、ピアノのイベント参加のため浜松に向かう電車の中で加藤和也先生の本を読み進める。

f:id:jimkbys471:20190601112846j:image

難解な、数学の最先端を初学者(とはいっても高校程度の数学の理解は必要)にもわかりやすく説明している、読みやすい名著であるとつくづく思う。友人の数学者(大学の同級生の天才)のおすすめだけのことはある。

 

 

 

 

先日投稿した平方剰余の相互法則に続き、奇跡のような(定理ではないが)、技法(と呼ぶのは適切なのだろうか?)のひとつとして、保型形式というものがある。

f:id:jimkbys471:20190601112947j:image

初学者にはこのページを理解するのは難しいが、これがあのフェルマーの最終定理の証明の鍵を握ったのみならず、現代数学の発展に寄与したと聞けば、がんばって理解しようという動機にもなる。

このページを理解するには、楕円関数と体をまず理解する必要があるが、その説明はこの本に丁寧に例と共に書かれているので大丈夫。

簡単に述べると、F_p(ここでFは通常のアルファベットではなく二重線で記すのが数学上の決まり)という整数上の体(四則演算ができる)であり、素数pで整数を割った際の余り(剰余)からなる集合である。たとえばF_5は{0,1,2,3,4}である。そして、ここで出てくる楕円関数とは解析の世界でとても重要な役割を果たす関数である。

この例の楕円関数y^2=x^3+1は、通常の方程式を解くと自明な解として(x,y)=(0,±1)がある以外には、整数解はなさそう(実際に無い)だが、F_5においてはこのページにあるように全部で5つの解がある。この解の数をn(p)とすると、この場合n(5)=5である。

そして、ここに唐突に出てくるqの多項式が、保形形式である。この本の後の方を読むと、なぜこの楕円関数に関してこのqの多項式が対応するのかが書かれているが、刮目すべきは、このqの多項式のp次(q^p)の係数が、p-n(p)に等しいということだ。

p=2,3,5,7,...について、F_pでのこの楕円関数の解の数を数えると、一見ランダムなのだが、この保形形式の係数と一致するというのであるから驚きである。

しかもこれは(後続のページであと2つ楕円関数の例が出てくるが)他の楕円関数でも成立するというのだ。

これは天才数学者たちの数百年にわたる努力の結果見出された法則であるが、少し理解しただけでもまるで奇跡のようである。