コンサルタント=ピアニスト=ランナーはきょうも語る

現役経営コンサル兼ピアニストがランニングと仕事術とピアノと英語とかについて語ります

動的平衡と企業戦略

以前の投稿でも取り上げたが、生物学者福岡伸一氏の「動的平衡:生命はなぜそこに宿るのか」を仕事の必要で読んだが、これは数年ぶりに出会った良著だ。
あらためて企業戦略への示唆について考えを述べてみる。

動的平衡というのは実は自分の分野でも常に考えていることだが、その概念をモデル化し数式でわかりやすく説明する能力は科学者の範であると思う。

生命は合成より分解により力を注ぐ。それはエントロピーの増大つまり死へ向かう方向に抗うためであると。

企業も生命体である。戦略とは事業環境(外部環境、内部環境、あわせて3C(Company, Customer, Competitor)を的確にかつ適時に把握し適応するためのインテリジェンスである。

そして、外部環境と内部環境の間には実は明確な境界はなく、企業は開かれた系(システム)であり、そして外部環境も内部環境も刻々と変化し、したがって常に揺らいでいるのであって、企業の存在というのは動的平衡を保たなければならないものである。

生命は合成より分解により力を注ぐということを企業にあてはめて考えると、合成というのを既存事業の拡大であったり新規事業領域への進出と考えた場合、分解というのは捨てること、壊すことである。

戦略とは捨てることである、というのが持論であるが、動的平衡を保ち死を免れるためには、捨てることにより企業は力を注がなければならなないということにもなる。

そして、実際に捨てることは難しい。認知バイアスというのがそこに働くし(今持っていないものを得られないことより、今持っているものを失うことを人間は恐れる)、既得権益というものがあるからだ。