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コンサルタントはきょうも語る

現役経営コンサル兼ピアニストが仕事術とピアノと減量と英語と沖縄とかについて語ります

創薬はまだまだこれから

医療

傍目からみると、医薬品開発というのは、きわめて成功確率が低く難度が高いものと思われるであろう。そして、これまでの新規化合物や新しい作用機序(薬の効き方)の発見がどれだけ臨床試験の過程で葬り去られたかその死屍累々をみれば客観的定量的にその難しさが裏付けられるかにみえるし、製薬会社が儲ける理由、M&Aをする理由がこの新薬創出の難しさを前提とした莫大な額のR&D投資と新薬候補(開発品)ポートフォリオの分散であることももっともらしい。

従来の新薬開発のアプローチを前提にすれば、それは確かにそのとおりかもしれない。が、こんなことをいうと製薬会社やアカデミアから怒られること必至だけれども、従来の新薬開発は「数うちゃ当たる鉄砲」と大差ないのである。

「新規化合物ライブラリ」「ハイ・スループット・スクリーニング」だの門外漢にはわけのわからない用語が並んで煙に巻かれるけれども、要は膨大な数の有効成分候補から、強い仮説もないままに力ずくで候補物質を選び出し、因果関係は判らないけどとにかく試してみて「統計的」に「効いたみたい」という動物実験、人体実験を繰り返すのに何億円、何十億円も使い、時に「効かないとは言い切れない」で承認をとってしまったりするのが医薬品開発の現状なのである。

医学、生物学、化学には、人体を相手にして未だわからないことが多すぎる。人の体に10万とも言われる種類のタンパク質がそれぞれどう機能するのか、互いにどう働くのか解明できたとはとてもいえない状況なのである。それを裏付けるかの如く、ある新しい抗体(タンパク質)が特定の疾患の原因となっていることが判ること自体が、創薬における大きなブレイクスルーになったりする(オプジーボが好例?)。

研究者たちはとっくにこのことに気づいていて、コンピュータが過去に較べ格段に高性能になった今、かつて不可能であった、高分子であるタンパク質の動きを電子レベルまで再現することができたり、細胞レベルでの機能を解明したり、それによってある特定の化合物との反応も計算できる、in vivo(生体での実験)でもin vitro(試験管、あるいは研究室での実験)でもなく、in silico(コンピュータ上で実験)へと医薬品開発のプロセスがシフトしていき、それにより格段に創薬の生産性(期間、確率、費用)を向上させる真のイノベーションを世界各国が目指している。

まだまだ時間はかかるかもしれないが、疾病がますます多様化し、医療費抑制圧力も高まる一方の状況において、このイノベーションの実現が強く望まれていることは間違いない。