方法論として定まっているリスクマネジメントの起点はリスクマネジメント計画の策定であり、その第一の作業はリスクの特定である。
どの教科書にも書いてあるこのリスクの特定作業だが、これがどうして難しいのである。
リスク特定のためのツールや手段はいろいろあって、ブレインストーミングやら既存のテンプレートを活用するなど書かれているが、どれ一つとして「これをやれば網羅的にリスクが洗い出せる」というものは存在しない。
同業他社のリスク登録簿(risk register)が仮に入手されたとしてそれを使えばいいというものでもない。なぜか。いくら同業でも戦略も事業内容も構成員もすべて同じではないからだ。
ではどうすればいいか。
よくノウハウを出し惜しみするコンサルタントがいる。さわりだけ伝えて「お気軽にご相談ください」というアレだ。
そんなのは大したコンサルタントではない。
事業機会を洗い出すのだ。市場機会ではない。自社が捕捉しようとする市場機会である。
事業機会を捕捉し、売上・利益目標を達成するためには、いかなる戦略すなわち誰に何をいくらで何を売り文句に顧客を納得させどう届けるかを具体化せねばならない。具体化していくとそれぞれの要素に未知や不確実性が見えてくる。知らないこともリスクになる。
これは、コンサルタントとして50社超の、日本およびグローバルの大企業からスタートアップまで、金融、商社、医薬品、化学から建設業に至るまで様々な業種における成長戦略支援を行なってきた中で、業績を継続的に向上させる仕組づくりまで、時に手取り足取り、社長や経営陣を説得しつつ取り組んだ経験から、テンプレート作りまで含め自ら直接やってきたことであり、特に組織的に平仄を合わせ行なわなければならないリスクマネジメントが困難を極める大企業に対しては、いますぐにでも教えて差し上げられることである(というより今実際にやっているのだが)。
次回はリスク評価について書いてみる。これも自分の得意分野である。