コンサルタント=ピアニスト=ランナーはきょうも語る

現役経営コンサル兼ピアニストがランニングと仕事術とピアノと英語とかについて語ります

日本の製薬産業の取るべき道は3つ(その2)

前回(その1)では、日本の製薬産業はどうあるべきか、どこに行くべきかに関する私論としての3つの戦略方向性があることを書きましたので、今回はこの1つ目について書いてみたいとおもいます。 

jimkbys471.hatenablog.com

 

3つの方向性の一つ目は「カテゴリーフォーカスプレイ」です。これは、2004年に山之内製薬と藤沢薬品が合併し現在のアステラス製薬が誕生した際、「グローバル・カテゴリー・リーダー」というビジョンを策定されたものに近いです。

既存プレイヤーである上位内資系製薬メーカーには、抗がん剤や高分子医薬品の創薬に特化すると共に、米国NIHが創薬を担っているように日本としても国全体として創薬をどう強化するか、その基盤をどう構築するかも、国として医薬品における産業競争力を維持する為にも必須である、というのが端的に言うとその方向性です。

新薬開発には長い開発期間(10年、15年)と巨額の開発資金(1新薬あたり1,000億円オーダー)が必要である、というのは製薬メーカーが何十年来しつこく主張していることですが、その開発の初期段階である創薬において最も重要な役割を担っているのは製薬会社ではなく、米国では国の機関であるNIH(National Institute of Health)であるという報告をどこかでみたことがあります(探しておきます)。

また、バイオベンチャー(海外ではベンチャーとは言わずスタートアップと言いますが)にしても、製薬会社はあまりアーリーステージで売上も利益も立っていないスタートアップへの投資にはどちらかといえば消極的であり、エンジェルやベンチャーキャピタル、PE(プライベート・エクイティ)がむしろ薬を育てているといっても過言ではないかもしれません。

日本にはNIHに匹敵する研究機関はありませんし、創薬ベンチャーに対する投資もアメリカの比ではありません、これでは永遠に日本が米国に伍する日は到来しませんし、差は開くばかりです。

ただし、特定のカテゴリー(ニッチというよりはより大きい市場セグメント)で集中して強みを発揮することは可能でしょう。

たとえばがんと言ってももはやあまりに市場の定義として広範過ぎるため、先日もこのコラムで述べたように作用機序で、たとえば「免疫チェックポイント阻害剤」という領域にフォーカスするとか、そういう戦略になってくるでしょう。

日本で大手とされる新薬メーカーが従前の「競合の収斂(competitive convergence)」から脱却し、戦略の本質に立ち返って経営方針を定め、集中して投資する、これこそが3つの方向性の一つ、カテゴリーフォーカスプレイという戦い方であり、ぜひ各社各様のフォーカス(ちゃんと定めることが大切)で戦っていただきたいと思っています。

次回は(その3)として戦略方向性の2つ目について書きます。