最近めったにCDを聴かなくなったのだが、実にひさしぶりにスルタノフの音源をCDで聴いた。
1989年のヴァン・クライバーン国際ピアノコンクールのライブ録音である。
収録曲はベートーヴェンのピアノソナタ熱情、ショパンのピアノソナタ第3番作品58などだが、熱情もショパンのソナタもかつては好きだった(中学生の頃)ものの、あまりに多く演奏を聴かされすぎて食傷気味である。
しかしそれをスルタノフなら覆してくれるのではと思い聴いたが、やはりスルタノフは期待を裏切らない。
ショパンソナタ4楽章の最後の和音が鳴るや鳴らぬやで会場からは堰を切ったかのような喝采と拍手の嵐。実際凄いmagneticな演奏だったのであろう。
ただ勢いがあるだけではない。烈しい中に歌があり対位法的表現は明確で、何より一音一音に主張が必ずある。
この演奏、1年前の自分であれば半分も凄さがわからなかったであろう。
ショパンのソナタのような精緻に作られた大規模な作品を弾きこなすピアニストの演奏にこれまで出会っていないだけかもしれない。