論文を見つけた。やはり研究している人はいるのだ。
ショパン「24の前奏曲」op.28にみる各曲の関連性と対称性について, 木下千代, 音楽表現学, 5, 33 - 44, 2007年11月
である。
まず要旨にはこうある:
「筆者(注:ピアニストである)も演奏に際してどのようにまとめたらよいかを考えるうちに、平行調の2曲ずつに書法上の関連があり2曲が対をなしているのではないかということに気づいた」
これは重要なポイントである。さらに:
「また平行長短調だけでなく5度上の調に移行する時も、音型などに何らかの関連性をもたせていることが多い」
としている。
つまり、24曲全てが関連性を持って綴られているということである。
こうなるとますます前奏曲集作品28は組曲として一つのまとまりを持った作品であるという意味を成すことになる。
前回①で提示した(仮説として)隣り合う曲との関連性(最終和音のソプラノを次の曲のメロディの開始音につなげていく方法)以外に、木下氏がこの論文で指摘いるのは例えば以下の関係である:
- 2番と3番のモチーフ上の関連(付点リズムの縮小)
- 4番で強調される下行する2度進行の5番へのつながり
- フェルマータのない曲の次の曲への(attaca的に)切れ目のないつながり
- 14番終結部のesのオスティナートの15番のオスティナートへのつながり
・・・とこのようなつながりをショパンが意図的に行なっていることは言うまでもなく、演奏の際には十分に意識しなげればならない。