ショパン前奏曲集作品28に関する文献を引き続き検索していたところ、素晴らしい研究論文に出会った。
昨年度の日大芸術学部博士請求論文、「フレデリク・フランチシェク・ショパンの《24の前奏曲》作品28にみられる旋法への傾斜」と題された論文である。
先日11/7に投降した「ショパン前奏曲集作品28⑯和声分析」において中山先生が12番の版による記譜の違いが調性によるものか旋法性によるものかとの論点を提示されていたが、この論文は旋法性に着目し、ショパンの他の作品も踏まえた上で考察を加えたものである。
この論文によると、ショパン作品の研究は数あれど、ショパンの旋法性について深く研究したものはないらしく、その意味で着眼点はユニークであり研究の独自性として意義深いのみならず、ショパン作品を演奏する上でもこの旋法性の理解はとても重要であることが示されている。
論文の第4章で旋法性について「ドリア旋法的な旋律」を第1節で2番、24番を、第2節では「ふりギア旋法的な旋律」として12番を、第3節では「リディア旋法的な旋律」として22番を、第4節では「エオリア旋法的な旋律」として12番を分析し、ここで例の中山先生が提起した個所を、導音処理されていない第7音がエオリアを特徴づける音と洞察を加えている。
さらに第5節では五音音階的な旋律として10番を分析している。
第4章第6節のまとめではさらに、8番の最後から2小節目の和声進行が旋法的であることも指摘している。
これら例に示される箇所について、それが個々の曲を性格づける重要なものであることを意識して演奏するとしないとでは大きな差が出てくる。