ここのところ承認される新薬は、その適応が「CD20陽性のB細胞性非ホジキンリンパ腫」、「マントル細胞リンパ腫」、「特発性肺線維症」など聞いたこともない疾病であることが多い。
これらはいずれも希少疾病であり、希少疾病用医薬品を俗に「オーファン・ドラッグ」というのは聞かれたことがある方もおられるかと思いますが、これらオーファン・ドラッグが次々に上市されるのは、これに先立って製薬会社が戦略シフトを図ってきたことにあります。
医薬品の2010年問題、すなわち1製品で年間1,000億円を超える売上をもたらす、主として低分子の慢性疾患薬(高血圧、高脂血症、糖尿病など)が相次いで特許切れを迎え、ボリュームゾーンが狙いにくくなありました。
そこで、より細分化された市場セグメントにおける市場機会(すなわち患者数の少ない疾病患者のアンメット・ニーズ)に資源をシフトするのは戦略的に一見正しい方向とおもわれますが、実際のところ製薬会社の収益にどれだけ貢献するかは疑問です。
オーファン・ドラッグは、日本では患者数が5万人以下の疾病に適応される医薬品とされています。
1バイアル、あるいは1錠で10万円もするような極めて高価な医薬品が珍しくなく、また開発コストの大半を占める後期臨床試験でのリクルーティング患者数が少なくて済むことから採算は良さそうに思われるので、こぞって製薬会社が参入しています。
承認審査における優遇もありますし、行政は「未充足ニーズ」解消に手を打っておりこれが製薬会社の行動を促しています。
豆知識的になるが、オーファンの中には、さらに患者数が1,000人未満のウルトラオーファン、さらに患者数が少なくなると超ウルトラオーファン(極端な例は2014年に承認されたニチシノン(商品名オーファディンカプセル2mg、同5mg、同10mg)で、高チロシン血症I型という国内患者数1人とされる)等というものもある。
このトレンドは今後も続き、ますます医療の「ロング・テール化」が進むことになる。