音大を出ていないながら、日本最高峰のコンクールであるピティナ特級でグランプリを獲得(つまり優勝)したピアニストである金子一朗さんとは親しくさせていただいているのですが(畏れ多くも)、著書に「挑戦するピアニスト」という名著があります。
この著書には、「いかにして効率的に多くの曲をモノにするか」の実践的・論理的な方法が数多く盛り込まれているのですが、その一つに「跳躍十ヶ条」があります。
- 横の音程
- 同時音程
- 音価
- 移動と打鍵の別
- ペダルを踏むタイミング
- 同時跳躍を避ける
- 跳躍前の音の正確な打鍵
- 前後ポジションの組み合わせ
- 手首の曲げ方
- 音量
以上10項目です。
ピアノ演奏において、跳躍はプロでも厄介な箇所のひとつです(とアマが言う)。
特に難しいのは、たとえば両手がしかも外に同時に跳躍する、ショパンエチュード作品25第5番のここです(`・ω・´)
左右同時跳躍が3回続きますが、最初の跳躍が難関です。
ここは緊張が最も高まる所なので、パパーン!と行かないと間抜けです。
そこで上記金子さんの十ヶ条の出番です!
ほとんどが意味を持ちます。
動作の順すなわち時系列でいうと、まず
7. 跳躍前の正確な打鍵
です。前からの流れで加速して足元(手元)が不安定ななまま慌てて跳躍したら極めて不確実になります。左右ともテンポ速くとも気を確かに落ち着いて和音を打鍵し、発射台を確保することです。
次に
5. ペダルを踏むタイミング
です。通常のペダリングは残す音の打鍵直後に踏むのが美しい響きを作りますが、この場合それをやっては間があいてしまいます。なので跳躍前の和音の打鍵と同時もしくは一瞬早くペダルを踏みます。動作としては打鍵とペダルはほぼ同時です。
次に
8. 前後ポジションの組み合わせ
と
4. 移動と打鍵の別
と
6. 同時跳躍を避ける
と
10. 音量
です。
前後ポジションの組合せとは、鍵盤の奥行方向の移動のことです。この場合、左手の跳躍の先はb(シのフラット)で、跳躍前が親指が白鍵なので前→後という方向の運動になります。右手は平行移動です。
移動と打鍵の別、とは、跳躍先への手の移動と打鍵の動きを(たとえ短い時間であっても)別のものとして考える、ということです。瞬間なので高速で移動してそのまま打鍵、というのは危険ですし、音量のコントロールもできません。
同時跳躍を避ける、というのはこの場合無理じゃないか、と思われそうですが、実は移動と打鍵を別にすると、微妙にタイミングをずらすことが可能です。特に右は外すと目立つ(かっこわるい)ので、右を先に移動させつつ左がほんのわずか遅れたタイミングで移動、そして同時に打鍵、というのは(かなり練習は必要ですが)できるようになってきました。
そして最後の音量も移動と打鍵を別にすることで可能です。
これで方法論は確立しました。あとは丁寧に落ち着いて練習するのみ!
跳躍は確率論ではうまくいきません。練習での確率がほぼ100%でも本番ではがくっと下がることもありますからね!