ショパンという作曲家は、強弱(f,p,cres,decres,dim等)にしてもペダリングにしても、音楽理論的に「当たり前」であることは基本的に記譜しないので、西洋音楽の基本である音楽理論(特に機能和声)を理解し、作曲者の意図を正しく分析し把握しているかどうかが、演奏を聴けば判ってしまうのである。
ショパンのペダリングについては、そうはいってもダンパーペダルについては自筆譜に指示されていることが多く、どこで踏んでどこで離すかは、実はかなり細かく指示していたりする。
ショパンのペダリングについて研究し結果を発表している日本語の論文をみつけた。
「ショパンのペダリングにおける美の様式: 《24の前奏曲》作品28-1、2、13番の分析による実践的研究」という国立音楽大学の加藤一郎氏による2011年に同大学の研究報告に掲載された論文である。
概要はこちら:
この研究は、自筆譜の中でも最も信頼がおけるとされるワルシャワ国立図書館所蔵のショパン自筆譜に基づくファクシミリを用いている。
加藤氏は、ショパンのペダリングを研究する題材として、数あるショパンのピアノ曲から前奏曲集を選んだ理由として、「この曲集が極めて閉ざされた環境の下で念入りに推敲されたこと、そして、ここの曲は短いが、多様かつ凝縮した内容を持っていることなどがあげられる」としており、この曲集をショパンの至高の作品と認める自分としては大きくうなずきたい理由である。
ほとんどの場合、ショパンはダンパーペダルの指示しか記載していないが、ショパンに精通する方々の証言によると、ショパンは実に見事にウナコルダを使いこなし、多彩で豊かな音色を、好んで弾いていたプレイエルで実現していたという。