コンサルタント=ピアニスト=ランナーはきょうも語る

現役経営コンサル兼ピアニストがランニングと仕事術とピアノと英語とかについて語ります

ポジティブなシミュレーション

おはようございます。アラフィフの社会人アマチュアピアニストじむです。

数日前にふと気づいたのですが、大人がステージで演奏中崩れたり堅い音になって小さいスケールの演奏になってしまうのは、人間として自然なことなのかと。

まったくの私見なのですが、人間の防衛本能と、知恵と経験を重ねることで研ぎ澄まされるクリティカル・シンキング(経験を積むと物事がどう悪い方向に展開するか先読み出来るようになる知恵を獲得しますね)は、ネガティブなシミュレーション能力を高めるのではないかと。物事がどんどん良くなる方向にも考えられるようになると良いのですが、危機回避、リスク管理の方が生存の為により重要なせいなのか、そこには非対称性が厳然と存在するようですね(未検証ですが)。

この仮説から得られる示唆は、意識的にポジティブに状況をシミュレーションする努力が必要であり、これによってその非対称性を出来るだけ解消することが、ピアノでもスポーツでも或いはビジネスでもパフォーマンス向上には必要だと思うのです。

で、ポジティブなシミュレーションは具体的にはどうやるのでしょう。

ピアニストの日常にはネガティブになる材料ばかりですね。練習していても音は外すは、アーティキュレーションはメリハリつかない、豊かなフォルティシモは出ず音が割れ、芯の通った美しいピアニシモはかすれ、聴かせるべき声部は埋もれバランス悪い、フレージングは中途半端、ピークに持っていくのが早過ぎたり、十分なデクレッシェンドができない、左手がモヤモヤしたり右手の足を引っ張ったり、ペダリングのキレが悪く音が濁るか逆に不十分で豊かな響を損なったり、親指の脱力ができていないため滑らかな動きが妨げられたり。。。しかもレッスンでは自分が気づいていないことも指摘され、人の演奏は過大評価かもしれないがうまく聴こえるし。。

しかもそれら要素を同時に意識して弾くと「やりたいことはわかるんだけどね」と指摘され、なんか頭でっかちでぎこちない演奏になっていると思ったら自然な流れがどこかで滞ったりしている。。

しかしやはり順番にひとつずつ身体に覚え込ませるのが早道。要素を分けて捉え分けて練習する。それができたら次へ行く。しかも行き当たりバッタリではなく、最終形を最初にしっかりアナリーゼの段階で描いた上で練習アプローチも設計する。各要素ができて終わりではなく、統合の段階も各要素をどうバランス良く配置し結合するかも考えて進める。

こうやって最終形に確実に最短で到達する道筋を描き確実に進む。決して焦らず飛ばさず。確実に前進していることを認識しつつ練習することが自信につながる。

そして重要なのは、音楽像と自分の演奏時の感覚がオートパイロットに頼り過ぎて分離することの無いよう、感覚をさぼらせた練習を本番前に決してしないこと。無意識になんとなくできている、を排除する。全てはコントロール。結局のところ怖いのは本番でコントロールを失うことに尽きる、と初期段階から割り切って考えることだ。

身も蓋も無い言い方をすれば自分の演奏を創るのは自分以外の何者でもないのだから。

人を感動させる演奏はマジックだ。マジックには必ず仕掛けがある。仕掛けを理解し身体に覚えこませるまで確実に練習してあくまでも自然に舞台で見せるのがプロのマジシャン。アナリーゼはマジックの仕掛けの理解であり、練習は仕掛けを設計どおり確実に再現する上でのあらゆる障害をひとつずつ除去していく作業。全部除去できたらあとはただ再現するだけ。必ず設計どおり仕掛けは機能し、聴衆は感動し自分は達成感と充実感、それに音楽と一体化した満足感を得る。ここで「音楽に完成形はない」「追求に終わりは無い」と考えないことだ。本番に臨んだらself criticismは意識的に遮断する。その為に出来るだけのことは既にやってきたのだから。

このようにマインドを変え努力しても最初はうまくいかないかもしれない。それほどまでにネガティブなシミュレーションは手強いのだ。しかし克服できないものではない。その失敗から学び次への準備作業のワークプランに織り込めばいい。こうやってPDCAを繰り返し回すのだ。きっとポジティブなシミュレーションはできるとポジティブシンキングを自分に教え込む。

無理にでもとにかくポジティブに。