コンサルタント=ピアニスト=ランナーはきょうも語る

現役経営コンサル兼ピアニストがランニングと仕事術とピアノと英語とかについて語ります

クライバーン国際アマコン挑戦記(その2)

第7回クライバーン国際アマコン報告第2弾はQuarterfinalの私見と私情に満ちた報告をお届けします!

(この記事を書いたのは6/22です)
最後までいた前回とは異なり、次のラウンドに進めなかったら即帰国すると決めていたのですが1日だけ残ろうと思い、Quarterfinal第1日(2日間にわたって行なわれる)のほぼ全員をライブで視聴したことを感想を交え書いてみます。以下演奏順に氏名と年齢・職業・国籍・曲目と私見です。参加者という立場上かなり辛口なのでご容赦ください。
このコンクールはすべてのラウンドの演奏がすぐにYoutubeにアップされるのが視聴する側にとっては良いことでもある一方、落ちた参加者にとっては辛いところでもありますね・・・
結論から言うと本日のQF第1日目15名のうち、個人的に通過すると思うのはMatthias Fisher、Madalyn Taylor、Thomas Yu、Deirbhile Brennan、Shinji Wadaの5名です。SFは12名なので明日次第ではありますがこの5名は入るのではないかと(間違っていたら事務局に申し立てします)。
ただし、個人的に好きな演奏とは必ずしも一致しません。これについては(あまり興味ないかもしれませんが)付記します。

Joseph Mercuri(56、医師、米): リスト:ペトラルカのソネット104番、メンデルスゾーン:幻想曲嬰ヘ短調作品28
この人は予選でベトソナ1番1楽章とショパエチュ作品25-1と12を弾いたのですが、ソツなく弾いたものの個人的にはまったく何も伝わるものが無かったのでまさか通るとは思わなかったのですがそこは予選はさすがに足切の位置づけらしく通った人です(個人の感想です)。リストはのっけからいきなり怪しげな和音に編集され、すっかり聴く気をそがれたのですが、この人はやはりたたき上げでピアノ教育を受けているらしきこともありそこはうまく立て直してまたもやソツなくまとめた感じです。メンデルスゾーンは個人的にはこの曲を選んだ時点でアウトなのですが(おそらく要求されるメカニックの種類が少ない割に時間が長いからでしょう)、やはりとても眠気を誘う演奏で時差ボケの身には辛いものがありました。ただし大きな事故はなかったので(小さな事故にうまくおさめたともいう)ボーダーかと思います。個人的にはこのラウンドで終わりかと。

Matthias Fischer(42、医師、独);ショパン:バラード第3番作品47、メンデルスゾーン:厳粛なる変奏曲作品54
バラ3はほぼ完璧でしたが、ショパンに関しては個人的にはものすごく「こう弾くべき」が強いのでどうしても評価が厳しくなります(これは審査員の多くもそうでしょう)のでGreatとは言い難いところです。何箇所か「えっ?そこでそんなにバッサリ切っちゃう?」というような音楽の流れを阻害するようなアーティキュレーションがありましたが、そうはいってもこの有名曲をビシっと弾くのはさすがです。厳バリに関しては言いたいことは山ほどあるのですが、最も問題なのはこれだけ弾けるにも関わらずなぜ視奏なのか、それもpage turnerを使わず自分で踏めくりをしたが故に時に手間取って不自然に長い間ができてしまったことはマイナスでしょう。また、変奏および変奏内部でテンポの変化が大きすぎる。特に第6変奏とか第15変奏はやり過ぎ。おそらくは師匠のアドバイスなのでしょうが、聴いていて納得感がなかったです。そうはいっても本日15人の中で相対的にはかなり完成度の高い演奏と言えるので、SFの可能性は高いかと思います。

Madalyn Taylor(66、小売店経営、米):バッハ=ケンプ:Ich ruf zu dir, Herr Jesu Christ, BWV 639、シューマン子供の情景作品15
前回もそうでしたがこの人はとにかく楽器を鳴らすのがうまい。メカニックを強調するタイプではないからかもしれませんが、とにかく一つ一つの音に表情がとても豊かに表れる。その強みを十分に認識した上での選曲と、それを本番で見事に演出する能力の高さには敬服します。Preliminaryでのショパンマズルカ3曲には些かやり過ぎ感はありましたが、正統的な演奏であるか否かは彼女の響きを以てすれば些末な問題なのかもしれないと思えるほどです。子供の情景は個人的にはシューマンの最高傑作なので彼女がこれを選んでくれたことをとても嬉しく思うと同時に、一曲一曲に大きな期待感を以て視聴していましたが、ほぼ期待通りでした。難を言えばテンポや曲想の変化を彼女ほどの実力を以てすればもっとつけられると思ったのですが、おそらくそれも個性なのかと。あばたもえくぼとはこういうことかとも思います。これだけの主張の強さと説得力からすればSFはほぼ確実でしょう。

(その3に続く)