昨年から、新たな組織形態の概念として「ホラクラシー(holacracy)」が人材組織論のエキスパートとされる人たちの間で関心を集めています。
これは、哲学用語でホロン(holon)と呼ばれる、部分自身が全体でもある「全体子」ともよぶ要素間の関係を意味するものとして定義され、従前の(以前支配的な)階層型組織(ヒエラルキー)に対する組織のあり方として提言されたものです。
ホラクラシーとは、「組織図、肩書、役職を廃し、経営意思決定をトップダウンでなく組織全体に分散させる」ものなのだそうです。これまでにもヒエラルキーのアンチテーゼは様々提唱されていますがどれも根付きません。
理由は明白です。どれも要素還元論、機械論的世界観に基づいており、組織の本質である動的なシステムとしての性質を捉えていないからです。
また新たなカタカナが出てきましたが、(言葉としてはどうせすぐ廃れると思いつつも、コンサルタントとしてはこういうバズワードに無批判に飛びついたり逆に安易に否定するのでもなく、なぜ今こういう言葉が関心を集めているのか、その背景と意義、そして今後これが浸透するのか廃れるのかについて自分なりに洞察を加えることは大切です。
これまでの自律分散型組織の延長線上にあるホラクラシー概念出現の背景は、働き方改革のそれと同根ですので、実はこの概念は今回はある程度浸透するかもしれません。
掛け声に終わり形骸化しているエンパワーメント、個人の役割と意思を尊重する性善説的な経営のあり方は、時宜を得ているように思います。ただしどの組織も内外から「統制」を求められる以上、形態的としてのホラクラシーが定着することは考え難いですね。
コンサルタントとしてクライアントの組織改革に携わる際にしっかり認識しておくべきはどの組織にもフォーマルな組織(一つ)とインフォーマルな組織(多数)が存在し、インフォーマルな組織をマネジメントする方が遥かに難しいことであり、同時にインフォーマルな組織を改革しマネージできれば組織の生産性は向上することです。
これはPMI(買収後統合)や、ぼくが提唱するアライアンスマネジメントにおいてもアドレスしている重要な側面です。