ピアノ曲は邦人作曲家の作品も好きですが、特に好きなのは武満徹の作品です。
武満徹(1930-1996)は管弦楽作品「ノヴェンバー・ステップス」で世界的に知られる作曲家となり、多くの作品を残していますが、個人的に最も好きな作品は1992年に作曲された「雨の樹素描IIーオリヴィエ・メシアンの追憶にー」という演奏時間5分ほどの作品です。
この曲は独特の和声が確かにメシアンを思わせ、また透明感のある立体的な響と、「間」がその魅力だと思います。
そしてその美しさからか日本人に限らず多くのピアニストが演奏しています。
譜読みがし難いのでしばらく敬遠していましたが、昨年からいくつかメシアンの作品を弾くようになったこともあって今となってはかなり取り組み易くなり、あらためて練習を始めました。
近いうちにどこかで弾く機会を作ろうと思います。
武満徹の別の作品に、この曲とはまったく性格の異なる「ピアノ・ディスタンス」があります。
この曲も5分超の小曲ですが、とても印象的な曲です。先週特級セミファイナル(8/18)を聴きに行った際、特級グランプリを受賞した片山柊さんの演奏は鮮明に記憶に残っています。
片山さんの演奏がYoutubeにアップされています。
片山さん自身がTwitterでつぶやかれていますが、この曲後半に長いポーズ(休止)があります。楽譜には「long」と指示があるだけで、何拍とか何秒とか決められておらず、演奏者の解釈と判断でどれだけ長い休止にするかを決めるのです。
この動画では3分14秒からなんと34秒間にわたって無音の状態が続きます。片山さんもご自分で休止の長さを演奏後に計測されています。
この間、会場の第一生命ホールを埋めた聴衆はみな物音ひとつ立てることもなく、静寂に包まれ固唾を飲んで次の音を待っていました。
ジョン・ケージの有名な作品「4分33秒」は最初から最後まで一つも音を出すことのない無音の音楽ですが、それともまた異なる静寂のエネルギーを感じさせる作品です。