シニアな(駆け出しではない)コンサルタントにとって最も重要かつ難度が高いことは何かと聞かれたら迷わずexpectation managementと答える。
expectation managementとは何か。
期待値マネジメントである。
期待値とは、クライアントの、コンサルティングプロジェクトの成果物の水準(ここで品質と言わないことに注意。品質という言葉にはプロジェクトマネジメントの世界において厳密な定義がある)の「認識」である。
そしてそのマネジメントとは、クライアントの、コンサルタントとしてコントロールすることが困難な期待値という対象を、限られたプロジェクトリソース(時間、人など)の制約で如何に裏切らないどころか、期待値を超えるか、という行為である。
こう説明するだけでも、「そんなことが可能なのか」と思われるだろう。
実際、ベテランのコンサルタントでもこの期待値マネジメントに賛同しない人も存在するぐらいだ。
しかしできないことをできないと言い、できるといったことはしっかりやって成果を出し客にその価値を認めてもらうのはコンサルに限らずプロフェッショナルとしての鉄則である。
コンサルタントは下僕でもなければ奴隷でもないし、魔法使いでも神でもない。
また、クライアントの期待値をマネジメントするとは、クライアントに対して不誠実であることではない。むしろ逆である。
この意味が判ってこそ一流である。
自分もこの意味を理解するのに五年はかかった。
この文章だけで本質が理解できる人はかなりコンサル適性が高いと言える。