グローバル不動産業界を変えると言われているベンチャーがある。WeWorkである。
よくこの手の「●●業界を変える」というのは眉唾のものがほとんどだが、WeWorkはAirBnBやUberに次ぐ「シェアリング・エコノミー」の旗手として、確実に不動産業界を変えつつあると言っていいだろう。
The Economistがベンチャー(スタートアップ)を取り上げるのはあまり例が多くないが、それだけ注目に値するということであろう。
WeWorkはアメリカのスタートアップで、2010年にニューヨークでAdam NeumannとMiguel McKelveyがコワーキングスペースとして創業、非上場だが現時点での時価総額は約200億ドル(2.2兆円)、世界22か国に274か所、床面積合計約100万㎡のシェアドスペースを有し、ユーザー数は26万人を超える。
ロンドンでは民間企業として最大面積の借り手であり、マンハッタンでは2番目というもはや超大型テナントとなっている。このことは不動産業界の間でも注目されており、従来型の不動産投資を変えるという見方も広まっており、このためCBREやJLLといった大手不動産業もWeWorkやLiquidSpaceといった不動産シェアリング企業と提携したり出資したりしているほどである。
WeWorkのビジネスモデルの台頭を後押しするトレンドは日本では働き方改革などと言っているが、既に米国など海外では固定的なオフィスでの固定的な勤務時間といった固定的な働き方に捉われない働き方が浸透また雇用形態も多様化し、フリーランスも増えていることから、ますます固定的な「本社オフィス」からのシフトが進んでいることがあり、これはこれからも進むと見られていることが、WeWorkの驚くべき高い事業価値(専門家の中にはばかげていると冷笑するものもいるが)を説明する一因である。
日本でもTKPのような貸会議室専業、あるいはSpaceeといったスペースシェアリングのプラットフォームが存在し、いずれも成長しているようだ。
我々コンサルタントも、自社オフィスで朝から晩までずっと過ごすということはむしろ少なく、顧客訪問や常駐、出張など動き回ることが多く、コワーキングというよりむしろ出先で1時間、2時間作業をしたりチームで打合せしたり電話会議をしたり(カフェで仕事はしにくい)するには、Spaceeのようなサービスはとても重宝する。
まだ商業不動産市場全体から見れば小さな存在だが、企業の働き方改革、テレワークが進み(ICT技術の浸透にも後押しされている)、従来型の固定床のニーズが縮小すると共に、一時的で柔軟なワークスペースのニーズは高まることは間違いない。
実際にスペースシェアリングを使おうと思うと東京ですらしかしそれほど使い勝手が良いとは言えない。十分な数のスペースもないのでなかなか都合の良い場所・時間でちょうどいいスペースを使えるとは限らないのが現状だ。より多くのスペースが「流動化」されるには不動産オーナー側の意識の変化も必要であろう。
「不動産」であるから不動ではあっても、使い方はより柔軟に小口に適時に適所で使えるようにすれば不動産価値向上にもつながるだろう。現在はたまたま日本の大都市圏のオフィス稼働率は極めて高いが、実際には借り手はついてはいても使われていないスペースは多くある(テナント共用部会議室など)。今後に大いに期待したい。