どの曲にも(好きな曲に限定されるが)自分が言うところの「鳥肌ポイント」がある。
この箇所を素晴らしく弾くと鳥肌が立つからそう名付けている。
逆に言えば、これら鳥肌ポイントを無思慮に無造作に弾いてしまっている演奏には魅力を感じないともいえる。
鳥肌ポイントは必ずしもその曲の「ピーク(頂点)」とは限らない。
作品28の各曲について、鳥肌ポイントがどこか、そしてなぜそうなのか、を6回に分けて解説する(一度に24曲分書くのは大変なので)。
今回は5番から8番まで。
第5番 ニ長調
箇所: 21小節目後半
理由: Durで快活な曲だがこの小節から陰影が出てくるその色の変わり目の小節。このおおむね明るい基調の中で絶妙な陰影を醸し出すところにこの曲の味があると思う。
第6番 ロ短調
箇所: 11小節目
理由: 一貫して陰鬱な曲だが、曇天の中のほんのひと時の晴れ間のような箇所である。第5番とは逆にどこか物憂げな明るさをほんの少しだけ出すところにこそ鳥肌ポイントたる意義がある。
第7番 イ長調
箇所: 12小節目
理由: ここはこの曲のピークである。この和音の意外性をどう出すか。あまりにあからさまでもセンスが無い。センスの良さに鳥肌が立つというもの。
第8番 嬰ヘ短調
箇所: 7小節目
理由: シャープ6個の嬰ヘ短調からフラット5個の変ロ長調への劇的な転調。エンハーモニックの嬰ハ長調(五度調)ではなく変ロ長調である。この転調による色彩の変化をどこまで出せるかが妙味である。