コンサルタント=ピアニスト=ランナーはきょうも語る

現役経営コンサル兼ピアニストがランニングと仕事術とピアノと英語とかについて語ります

【読書メモ】宇宙と宇宙をつなぐ数学(加藤文元著)

昨日の投稿に続き、加藤文元先生の近著を早速購入し一気に読んだ。 

amzn.to

jimkbys471.hatenablog.com

 

内容自体は昨日見たニコ動とほぼ同じではあるが、動画では触れられていない、やや技術的な内容や、いくつかとても共感できる考え方にも遭遇でき、きわめて有意義であった。

特に共感できたポイントはたとえば:

数学は異種格闘技戦である!

である。

コンサルティングという仕事を始めた頃から、同僚たちと常々語っていたのが「コンサルティング異種格闘技」ということだ。

企業の経営者を説得するのに必要なロジック、データを駆使する上で、歴史的な観点、統計、ビジュアルな表現技法、話法、と様々な領域にわたる知識・スキルを駆使する仕事であるからだ。

数学にも様々な専門分野があり、問題を解くにあたって一つの分野の理解だけでは不足であるということを言われている。

 

また、こうも言われている:

応用vs純粋という安直な二分法は、すでに時代遅れです。

これにも大いに同意である。自分は特に「両断論法」を嫌う。

理系vs文系というのもそうだ。自分が建築専攻だからということもある。建築というのは一般的にはアートの一種と巷ではみなされているが、その構造は極めて精緻に工学的に分析し構築されているものであり(自分の専攻はこっちのほう)、時として構造そのものが建築物の意匠(デザイン)になっていることもある。

アントニオ・ガウディサグラダ・ファミリアの構造が懸垂線を基本にしていることはよく知られているが、懸垂線は自然に建物の自重を流す数学の曲線である。

数学の応用と純粋に関しても、昨日の投稿でも少し述べたが、「実用」とはそもそも何かをまずは問うべきであって、それは人間の知とは何かということにもつながる。仮に「純粋数学」という範疇があったとして、それが「実用的」(一般的な意味での)でないとは思わない(昨日述べたとおり)。

加藤先生は、数学の理論が「実用」に供されている例として、楕円関数、ブラック=ショールズ方程式(伊藤積分と確立微分方程式から導かれたオプション価格決定式)、誤差逆伝播法等を挙げられており、自分もリアルオプションの評価の際にブラック=ショールズを用いたことはある。コールセンターのオペレーション改善に待ち行列を使ったこともある。ただし、仕事で使う数学はほとんどの場合きわめて初歩的な「算数」レベルで十分なのではあるが・・・

 

そして、IUTに関して何がmost significantかというとそれは従来の数学のアプローチとは異なりながらも自然なアプローチを構築しよつとしているところにある、という点にはやはり驚嘆を覚えずにはいられない。rigidな数学の世界では解決できないいくつかの重要な予想の解決はIUTという画期的なアプローチの端緒に過ぎないという点についても、もちろんIUTが何たるかは判らないものの、その姿勢に大きく勇気づけられた。

 

自分としては、IUT以前に先日取り上げたp進数、或いは群論、他にも自分の知を増幅し、仕事の上でも新たな視点・アプローチを開発することに寄与するであろう考え方が数学には多くあることを感じており(黒川信重先生と加藤和也先生の本は読みかけだが😥)、その意味では自分にとって数学はとても「実用的」だ。

 

加藤先生とは直接の面識はないのだが、自分が理事を務める研究所の研究会でもご講演いただいたり、何かしら縁はあるようなので、いつかIUTに限らず、数学の意義について話す機会がいただけたらと密かに思っている。