「いま取り組んでいる曲」のうちヴァインのソナタ1番について語ります。
オーストラリアの作曲家であるカール・ヴァインが1990年に委嘱により作曲したこのソナタは、その斬新な曲想と演奏効果で一躍彼の名を高めることになりました。
ひと頃は国際ピアノコンクールでもしばしばレパートリーに加えられていました。
この曲を初めて聴いたのは何かのコンクールのライブでしたが、「弾いてみたい」とは思ったものの楽譜を買ったままホコリをかぶっていました。
3ヶ月前に、何かスクリャービンより現代の曲を除き数曲レパートリーに加えようと思い立ち選んだ一曲がこれです。
最低音部のサイレントクラスター和音(ソステヌートペダル指定)で始まるユニークなアイデアで、その上に浮遊感ある和音による動機が弱音で奏される点も十分に印象的ですが、その次に登場する幅広い音域に渡るパッセージも何か未来的なものを感じさせ聴くものを引き込みます。
調性は明確ではないものの、この辺りまでは覚えやすい旋律と和音なのですが、中間部にはランダムと思しき音列が登場します。
シェーンベルクの十二音技法とも異なり、調性も音列も一切の解決を拒否しているかのような(ただし音価はソプラノが保持音であることを除けば16分音符で一定)この部分は、アナリーゼしてみましたが未だ解明できず(・・;)
難解かつ極めて技巧的に見え聴こえる曲ではあるものの、楽節の反復も多く、実は効率的にさらうことを許してくれる曲でもあります。
ポイントは楽章中のキャラクターの変化とそれに応じたデュナーミクとアーティキュレーションの幅と多様性、緩急の切り替え、それに隠れたラインを含めたポリフォニーを意識し立体的に構成し表現することでしょう。リズムの切れ味の良さも重要です。
やはり難しいですね(・・;)