コンサルタント=ピアニスト=ランナーはきょうも語る

現役経営コンサル兼ピアニストがランニングと仕事術とピアノと英語とかについて語ります

オーケストレーター(5)要件

ぼくが考えるオーケストレータの要件は5つあります。ひとつひとつをみると「パクリじゃないか!」と思われる部分もあるかもしれませんが、ちがいます。オリジナルです。ひとつひとつの定義(程度問題)をこの後に書きます。

 

まずは5つの要件:

  1. 地頭が強い
  2. 天邪鬼である
  3. 好奇心が強く飽きっぽい
  4. 神経質である
  5. 承認欲求が強い

 

いかがでしょう。そんじょそこらのプロフェッショナルの条件とは違う気がしませんか?

というより、1はともかく(コンサルティングファームの面接で最も重視する項目の一つですね)、他はむしろ欠点として認識されることが多い特性ではないでしょうか。

 

ではこれからなぜこの5つが、これからの社会で求められ、人工知能を自らの知性の拡張として活かすことができる人材である、「オーケストレーター」の要件なのか、について簡単に述べます。もっと長い解説がオリジナルなのですが、あまり長文でも読みにくいので簡潔に。

 

1.地頭が強い

この定義として、NAVERまとめに「地頭の良さとは、問題を聞くと鮮やかにスピーディに答えを出せることではありません。そんなスマートなものではなく、泥くさい、知的体力を必要とするものです。アスリートたちの地道な日ごろの訓練に近いイメージです」とありますが、これはむちゃくちゃハードル高いですね。

ぼくの定義は、当たり前の答を出すことには興味がなく、答を出すプロセスを楽しむこと、です。好きこそものの上手なれ、です。ビジネスの問題を解決するのに、一つの公式やフレームワークを使って一発で答が出るということなどはまずありえませんから、当然ながら複数の定石やフレームワークを駆使して解くことになりますが、どう使うかというところに楽しみを見出す、問題を解くプロセスそのものを楽しむ、という姿勢を身に着けることが、地頭を強くすることにつながります。好きになれた時点で既に強くなっているとも言えます。人工知能との比較で言うと、コンピュータはそもそも問題の定義が得意ではありません。

 

2.天邪鬼である

天邪鬼であるとは、「みんながそう言っているから」に迎合しないということです。天邪鬼とは、もともとは仏教に由来し、また日本に古来より伝わる説話に登場する妖怪で、人の心を察してからかう存在ですが、現代においては、多数派の考え方や意見を踏まえた上であえてこれに反するような言動を行なうような人、あるいはその言動を指すようになっています。この、「多数派の考え方や意見を踏まえた上で」というところが、オーケストレーターとして重要な要件です。単に何でも反対するひねくれ者では決してありません。皆と違うことを考え発言するのには勇気がいるかもしれません。しかしそこはさすがに克服しないと、そもそも個の存在意義はかなり低くなってしまいますよね。また、いまのところ人工知能は素直にルールに従って真面目に計算をし、答を出そうとしますので、あえて脱線してみるとかちょっと遠回りかもしれないけどそっちに行ってみるといったとこは苦手なはずです(そのうち克服されるかもしれません)ので、天邪鬼というのも人間の知性ならではのものと言えるかもしれません。

 

3.好奇心が強く飽きっぽい

飽きっぽい人というのは、好奇心が旺盛であることが多いですし、好奇心が(人に対してでもモノやコトに対してであっても)強いということは、T字型人間の横棒を延ばすことに直結する重要な資質です。

新しいことを考え出したり、問題を解決するにあたって、頭の引き出しが多いことは確かに得ですが、専門家と呼ばれる方々には往々にして知識に頼り過ぎる傾向がありますし、ある一定のレベルまで達すると、大変豊富な知識をお持ちなのですが、自分のスタイルが確立してしまい、違う考え方に対する許容度が低くなる方をよく見かけます。これではオーケストレーターとは対極の「専門バカ」ですね。。

好奇心が強いということは、人を巻き込む上でもきわめて重要です。誰でも自分の話にきちんと耳を傾けて欲しいものです。そのためには、自分が相手に、また相手の話に心を開く必要がありますが、好奇心があれば自然と心が開けますし、それは相手にも伝わります。これは、重要な情報を引き出すためのコンサルティングのインタビューでも、何か結論を出すためのディスカッションでも、また会議やワークショップを効率的・効果的に運営するためのファシリテーションする上でも同じことです。

 

4.神経質である

しばしば神経質であることはネガティブに捉えられがちですが、神経質であることはとても重要です。神経質な人に共通の主な特性として、心配性であるということが挙げられますが、心配性というのは、そもそも人間に備わった防衛本能であり、否定すべきものではありません。それどころか、心配性の人は、気配りができる、慎重であるゆえに失敗することが少ない、道徳観が強い、几帳面である、といった良い面があるのです。

オーケストレーターは、そもそも「人間らしい人」ですので、神経質であることはプラスに働きますし、プラスを最大限に生かさなければなりません。過度に神経質であることはもちろんよいことではありませんが、少なくとも人に気配りができること(気を配り過ぎて疲れない程度に)、また丁寧に仕事を進める、ということはプロジェクトを進める上での基本ですし、それを徹底することだけでも(必ずしも突出した知識や能力がなくとも)周りの信頼を得ることにもつながります。

 

5.承認欲求が強い

近年よく言われるようになった承認欲求は、認められたいという欲求で、欲求段階説マズローによる5段階、すなわち生理的、安全、社会的、尊厳(承認)、自己実現の下から5段階)において、上から2番目に位置付けられる欲求です。

最近の使われ方としては、「意識高い系」の特徴ともされ、とかくネガティブに捉えられがちな承認欲求ですが、マズローが位置付けているとおり、人間の本来的な欲求であり、動機付け理論の前提でもあります。もし承認欲求がないもしくは弱かったとしたら、人事における表彰や、「ほめて伸ばす」人材育成も機能しなくなってしまいます。

承認欲求が強いことは、オーケストレーターにとって必要な資質です。まず、オーケストレーターとして成長を続けるためには、自己の成長を認識して継続的に自分を動機付けなければなりません。他人から認められる承認も、自分で自分を認める承認も、いずれも有効です。

 

要素分解すると、というより特徴的な5つの側面で捉えるとこのような要件になるかとおもいますが、より重要なのは、ではこれら5つの各々をどの程度まで満たしている必要があるのか、ということであろうと思います。

これらの要件はセットとしての要件であって、すべてにおいてある一定以上の高いレベルを達成することが必要ということではなく、最も重要なのはバランスです。ある一面だけが極端に高く他が弱いと、その要件に本質的に存在するネガティブな面(たとえば過度に神経質、過度に承認欲求が高い、など)が出てしまいます。しかし個々の方がどれがどこまで強い弱いかも個性だと思いますし、そもそもたとえば好奇心が強いというのも何か一つの軸で測れるものでもありません。

本質はこれら各要件の相互作用にあります。人間の本来の能力は知だけにあるのでも情だけにあるのでも意だけにあるのでもなく、それら3者、すなわち知・情・意の統合にあると思います。ただ、知・情・意というとあまりに抽象的で捉えどころがなく、どう統合したら良いか見当もつかないことになってしまいますので、オーケストレーターに必要な、従来言われてきたスーパー・ビジネスパーソン的なものではなく、ぼくの経験も踏まえ、より捉えやすい5つの要件として整理してみました。