まだまだクライバーン国際ピアノコンクールを地球の裏側から観戦した熱狂の余韻がのこっているじむが印象に残った演奏を今回はセミファイナルから勝手に選びます。
セミファイナルともなると、聴衆の期待もかなり高まってきます。予選や二次予選でどんどん期待値は上がる一方ですから、コンテスタントのプレッシャーも高まります。
しかもいくら皆若いとはいえ、疲れがないとは言えません。まだこの段階ではファイナルのコンチェルトや室内楽の練習もしなければならない訳ですから。
まずはすっかりじむのお気に入りになってしまったアメリカのDaniel Hsuです。
特にブラームスのヘンデルの主題による変奏曲とフーガをお聴きください。この曲はブラームスの作品中個人的には最高傑作であり、数ある変奏曲の中でもメンデルスゾーンの厳粛なる変奏曲、ラフマニノフのコレルリの主題による変奏曲等と並び最も好きな変奏曲の一つであります。この曲を弾けるピアニストは優れたピアニストである、という基準を持っているぐらいです(個人的な基準です)。というのも、変奏曲というのは表現の幅が求められると同時に構成感を持たせるのが難しいからでもあります。Danielの非凡さがこの演奏でわかります。
次はカナダのトニーです(またまた登場です)。
なんといってもショパンのソナタ2番の演奏です。特に3楽章「葬送行進曲」の中間部です。トニーが流した一筋の涙はこのコンクール全体を通じて最も印象的な部分です。これは観客には見えなかったかもしれませんがウェブキャストでははっきり見えます。汗という人もいますが、あれだけ目に涙を湛えていたのですから涙でしょう。もちろん、涙を流すこと=いい演奏ということではまったくありません。感情に流されるのがマイナスに働くこともあります。しかしトニーの場合は本当にゾーンに入っていたのでしょう、しかも聴衆にとって説得力がある方向にです。