仕事で何がやりたいかと聞かれれば(聞かれなくても言いたいのは)イノベーションを起こすことだ。
今産業界ではイノベーションという言葉を聞かない目にしないことの方が珍しいが、イノベーションの語彙の理解は、要素技術レベルから社会レベルまで非常に幅が広い。
権威とされる伊丹敬之先生の定義によれば社会が変わるものでなければイノベーションではなく、単なる新技術、新製品、新サービスではイノベーションに該当しない。
例えばi-modoはイノベーションではなくiPhoneはイノベーションである。それは当時の帯域に依るところも大きく、イノベーションが生まれるには単に画期的なアイデアと製品化だけではなくそれを育てる土壌と正しい戦略、その遂行に必要な経営資源が正しく配分されることが必要だということだ。土壌とはまずユーザーのニーズとその源泉となる未解決問題や妥協が潜在的に或いは顕在的に存在していることが必要だ。
天才的或いは偶然による発見や発明すなわちserendipityが必ずしもイノベーションの要件ではなく十分条件でもない。
例えばiPS細胞はイノベーションの萌芽ではあっても未だイノベーションには程遠い。治療もしくは創薬や医療材料・機器開発に実際に応用され、それが少なからず医療をそして我々の健康維持に明らかなインパクトを与えて初めてイノベーションとなる。それには超えるべき様々な壁が立ちはだかっている。
一方で、マスコミに取り上げられるほどではないが地味な技術の応用による製造プロセスの変革もイノベーションになり得る。
この続きは次回(2)で。