メシアンの「幼子イエスに注ぐ20のまなざし」(Vingt Regards dur l'enfant Jesus)の全20曲中最難曲とされる第6番「その方によってすべては成された)(通称:天地創造)はやや複雑な主題が古典的なカノンや反行、逆行に加え、メシアン独自の語法である「非対称の拡大」、それに逆行不可能なリズムを駆使した、大変複雑かつ緻密な構成の壮大なフーガです。
主題はまず1~2小節目、左手低音部に現れます。
これが12小節にわたり「非対称な拡大 」で展開されます。非常に弾きにくいです。
この部分の非対称な拡大を、根音であるDisを基準として図示すると、以下のようになります。
美しいですね!青い線が元の主題です。
この後に今度は主題がソプラノ、テノール、バスに1/2拍ずつずれて3声カノンが奏され、またその後に1拍ずれての3声カノンが奏されます。
50小節からは、ここがこの曲の最大の難所でもあるのですが、左手オクターブで主題の断片がしかも1音ごとにオクターブをずらしかつ非対称な拡大で展開されるというとんでもないことをメシアン先生はなさっておられます。
この部分の非対称な拡大を図示するとこんな感じになります。
美しいですね!
72小節目もとんでもありません。50小節目からの「逆行」、つまり楽譜を右から左、下から上に読む形になります。まるで時間を巻き戻しているかのようです。
実はこの曲は1小節目から129小節目がほぼ完全に時間軸上で対称(鏡像ですね)になっているのです。誰よりも対称性を愛したといわれるメシアンならではですね。
さらに、130小節目からは主題による3声カノンが現れます。冒頭近くのカノンは主題そのものの形を保っていますが、ここでは非対称な拡大となっており難しさは段違いです。しかも非対称な拡大の拡大の仕方が前出とは異なっているというところがまたメシアンらしいところです。ただし跳躍が少ないだけ弾きやすいです。
こうやって分析していると構造は頭に入っては来るのですが、やはり響きを確認しつつ体に覚えこませていくしかありません。
毎日、少しずつではありますが丁寧に練習を進めています。