前回に続き、加藤一郎氏のショパン前奏曲集作品28の自筆譜に基づくペダリングの分析について書く。今回は13番である。加藤一郎氏の分析については今回が最後になる。
加藤氏の指摘するとおり、13番には5箇所のペダリング指示があり、うち4箇所はドミナントであり、音域が拡大した箇所にある。
特に着目すべきと加藤氏が指摘しているのは、通常下に記載するペダリングを上に記載している箇所である。自分が使用しているパデレフスキ版では通常どおり下に記載しているが、そもそも作曲者が自筆でこう記載していたことは念頭に置いておかなければならないし、この箇所のペダリングはくれぐれも響きが混濁することのないよう細心の注意を払わなければならないことは言うまでもない。
また、この曲はA-B-Aの三部形式で、Aでの左手は伴奏だが単なる分散和音ではなく、非和声音を含むため、ペダルを踏みっぱなしにしてはならない。
そこで使うべきテクニックがフィンガーペダルである。特にエキエルは和声音のみ保続することを提案しているが、これは良いと思う。難しくなるが全てはショパンが理想としたとされる素朴さのためである。
この曲に限らず、フィンガーペダルが必須の曲はショパンには多い。たとえばエチュード10-10、25-1、25-5など枚挙に暇はない。フィンガーペダルを使わなければ弾ける曲でもフィンガーペダルを使うとなると途端に弾けなくなる。
要はどのピアノ曲もそうだが、安易にダンパーペダルで「ごまかし」てはならない。