米系戦略コンサルティングファーム時代の聡明な先輩が良い本であると言っていたので読んでみたが、あらためて思う。実際にこれは読むべき本である。
以前にもこの本の読書メモを投稿したが、今回あらためて通読して価値を再確認した。
著者は山口揚平さん。ファイナンシャルアドバイザーのキャリアから、今は経営者以外にも投資家や劇団経営など多彩に活躍されている方である。
この本は、タイトルを誤解してはいけない。1日3時間、やおだやかに暮らす、がメインテーマではなく、思考法がメインテーマである。
彼が言う思考とは人間にとって最も重要な能力であり付加価値の源泉であって、決してAIに代替されることのないものである。常日頃自分が考え、クライアントや周囲に(昨日も)説いていることである。
その思考法だが、彼の定義によると、考えるとは、「概念の海に意識を漂わせ、情報と知識を分離・結合させ、整理する行為」である。
そして、考えることは最も「コスパの高い」行為である、とも。
大いに同感である。
自分が研修(社内外で)「10倍のスピードで仕事する戦略コンサルタントの仕事術」をインタラクティブに講義する際のエッセンスもこれである。
この本の良いところは、自分がかならずしも形式知化していないことを、文章やダイアグラムで快刀乱麻に明快に惜しげもなく提示していることである。
彼はもはや戦略コンサルタントではないが、戦略コンサルタントは知を出し惜しみしてはいけない。この点は大いに学ぶべきものがある。
戦略コンサルタントが使いこなせなければならないロジックツリーや要因連関図などに加え、彼が詳述しているが二項対立である。
二項対立とはたとえば、原因と結果、短期と長期、量と質、過去と未来、政敵と動的、といったことであり、善と悪といった価値観を伴うものではなく、また両断論法とも異なる。
最後のむすびが良い。
パスカルがパンセの中で「人間は考える葦である」と言ったのは良く知られているが、その本意は、「人間とは広大な宇宙と比べれば小さな葦にすぎないが、人間にはその宇宙より大きなものを考える力がある、という意味である
大いに勇気づけられ、学びがあると同時に、自分が考えてきたことを明確に裏付けてくれる良書でもある。