いつものまえがき:ランナーにとっては、走らない時間すなわち一日の9割超の時間もトレーニングである。考えながら走るのは良くないが、走らない時間は正しい考え方で考えよう。そのための読書である。先人の知恵に学ぶ。ただし批判的に読むこと。
今回手に取ったのはこの本であります。
著者は田中宏暁さん。福岡大学スポーツ科学部教授で、日本陸連科学委員、JOCの強化スタッフ等を歴任された運動生理学の権威。
帯には「今始めても、3ヶ月でフルマラソンは完走できる!」と書いてあるが、フルマラソンにいまのところ興味がない自分はそんな帯には目もくれず、ランニングのメカニズムが知りたいがために買ったのでありました。
そういうわけで、7章で構成される本ですが、「第1章 走るための基礎知識<理論編>」と「第4章 ランニングの生理学」しか読まないです!
忙しい方々のために、ハイライトをご紹介します(つまりネタバレ)。
第1章 走るための基礎知識<理論編>のハイライト:
- ランナーと一般人が同じスピードで走った場合の消費カロリーには5%しか違いがない
- 移動距離1㎞あたりの消費カロリーは体重1㎏につき約1kcalで、これはスピードに依存しない
- 走れる体を作るための筋トレは必要ない
(所感:3点目はあくまで🔰向けの内容なので、タイムを短縮するには高速で走っても決してブレない強い体幹を作る、腸腰筋やハムストリングスの強化は必要かと思います)
第4章 ランニングの生理学のハイライト:
- 筋収縮などランニングに必要なエネルギーはATP(アデノシン三リン酸)がADP(アデノシン二リン酸)に分解される時に発生することでまず供給されるが、ATPの体内貯蔵量はわずかなのでそれでは足りない
- ATPがADPに分解されると直ちに高エネルギーリン酸化合物であるCP(クレアチンリン酸)が供給されADPをATPに再合成する。ただしCPの体内貯蔵量もATPの倍はあるとはいえわずか
- CPによりADPがATPに再合成される際、CPはC(クレアチン)とP(リン)に分解されるが、ここでミトコンドリアがエネルギーを供給してCPに再合成される。このときミトコンドリアは糖が分解されてできたピルビン酸と脂肪酸を酸化して水と二酸化炭素に分解する過程でCとPの結合に必要なエネルギーを発生する
- ミトコンドリアのエネルギー生成能力は酸素運搬能力に依存する。目安として、時速20㎞(キロ3’00”)で走る際に必要なエネルギー(単位時間当たり)は安静時の20倍
じむは理系だが生物は苦手な科目だったのでATPとかよく覚えていないのですが、要するにミトコンドリアのおかげで走れるということです。
そして、ミトコンドリアというのは実はまだ生物学でも医学でもホットな研究対象で、まだまだわかっていないことが多いのですが、一つの細胞に多い臓器では1細胞内に数千個もいらっしゃるとのこと。
仮に人体の細胞の数が60兆個(これも諸説あり)だとすると、ball-park(概算)で京(ケイ)のオーダーのミトコンドリアがいらっしゃることになります。
10,000,000,000,000,000個のオーダーですね。
ですので、練習やレースで苦しくなったら、ミトコンドリアを応援しましょう。
がんばれぼくの(わたしの)ミトコンドリア達よ!
ミトコンドリアといえば瀬名英明のパラサイト・イブですね。名作です。
なぜパラサイト(寄生虫)かというと、そもそもミトコンドリアはエネルギーを効率よく産生するバクテリアを人体が取り込んだという説が有力だからなのですね。
(友人がミトコンドリアの研究者なので詳しく聞いてみようと思います)
あと、ミトコンドリア病という難病があって、ある先生によればミトコンドリアはすべての疾病の原因とまでされる仮説もあります。未検証ですが・・・
ふむふむ。
かなり脱線してしまいましたが、要はランニングとはどういうことかを一度突き詰めて考えてみたかったというのが今回の主旨になります。
ではまた!