1960年前後、反精神医学という動きがあった。これは主に統合失調症(当時は精神分裂病、schizophrenia)患者の治療が主に施設で行なわれ、入院治療の実態において少なからず問題が発生していたことから、精神医学とは医学ではないという主張が喧しかったという。
ふとしたきっかけで、東大病院精神科の榊原英輔先生(若手医師)の論文を読んだ。
フーコーなど反精神医学の代表とされる三人の主張を分析した論文だがこれは面白い。
統合失調症を主に、そもそも精神医学とは何かを論じる力作である。
精神科に限らずそもそもどこからが健常でどこからが異常であるかの線引の基準をどこにおくのか。そもそも線引きはできるのか。線引できたとしてそれに我々はどう対処すべきか、といった論点は未解決のままなのだ。
自分自身もかつて自分が鬱であることを疑い心療内科を継続的に受診した経験があるが、一向に薬物療法では改善しなかったし医師と対立した経験がある。
いわゆる向精神薬の副作用はあまり知られていないどころか、向精神薬の効果効能自体が疑わしい(自分もひととき服用していたことがあるので実感としてある)。
反精神医学の一つの主張であるところの、精神医学が精神病の原因ではないかというのは自分にとっては実体験に基づく強い仮説でもある。