アナリーゼを終えた後、3月からピアノに向かって取り組んでいる作品28だが、19番は依然として自分にとっての難曲最高峰の地位を譲らない。
そして、レッスンを受けた師匠方を含め、3人の尊敬に値するピアニスト達が口を揃えて19番はとりわけ難曲だと仰る。
その難しさの本質をあらためて考えてみた。
楽譜をみると至ってシンプルである。両手とも三連符の連続である。
音型に起因する難しさの本質の一つは開離分散和音であることであり、よほど大きな手の持ち主でない限り、人差し指と小指でオクターブ届かない限り、跳躍が免れない箇所が至る所にあり、そしていくら大きな手の持ち主であっても跳躍をせざるを得ない箇所がある。
そして、この曲は決してゆっくりした曲ではない。作曲者はVivaceとしている。Vivaceは「軽快に」という意味であるので、決して絶対的な速度指定ではないとは言え、曲想から言って速く弾くのが自然である。
それでありながら、あくまでソプラノでうたわなければならず、内声はppできわめて軽く、かつバスラインも歌である。
ポリフォニックな音楽であり、エチュード10-11に通ずるところがある。
和音の変化、ゆらぎもきわめて重要な要素である。これを表現すること無くしては単調なメカニカルな曲になってしまう。