コンサルタントはきょうも語る

現役経営コンサル兼ピアニストが仕事術とピアノと減量と英語と沖縄とかについて語ります

日本の製薬産業の取るべき道は3つ(その2)

前回(その1)では、日本の製薬産業はどうあるべきか、どこに行くべきかに関する私論としての3つの戦略方向性があることを書きましたので、今回はこの1つ目について書いてみたいとおもいます。 

jimkbys471.hatenablog.com

 

3つの方向性の一つ目は「カテゴリーフォーカスプレイ」です。これは、2004年に山之内製薬と藤沢薬品が合併し現在のアステラス製薬が誕生した際、「グローバル・カテゴリー・リーダー」というビジョンを策定されたものに近いです。

既存プレイヤーである上位内資系製薬メーカーには、抗がん剤や高分子医薬品の創薬に特化すると共に、米国NIHが創薬を担っているように日本としても国全体として創薬をどう強化するか、その基盤をどう構築するかも、国として医薬品における産業競争力を維持する為にも必須である、というのが端的に言うとその方向性です。

新薬開発には長い開発期間(10年、15年)と巨額の開発資金(1新薬あたり1,000億円オーダー)が必要である、というのは製薬メーカーが何十年来しつこく主張していることですが、その開発の初期段階である創薬において最も重要な役割を担っているのは製薬会社ではなく、米国では国の機関であるNIH(National Institute of Health)であるという報告をどこかでみたことがあります(探しておきます)。

また、バイオベンチャー(海外ではベンチャーとは言わずスタートアップと言いますが)にしても、製薬会社はあまりアーリーステージで売上も利益も立っていないスタートアップへの投資にはどちらかといえば消極的であり、エンジェルやベンチャーキャピタル、PE(プライベート・エクイティ)がむしろ薬を育てているといっても過言ではないかもしれません。

日本にはNIHに匹敵する研究機関はありませんし、創薬ベンチャーに対する投資もアメリカの比ではありません、これでは永遠に日本が米国に伍する日は到来しませんし、差は開くばかりです。

ただし、特定のカテゴリー(ニッチというよりはより大きい市場セグメント)で集中して強みを発揮することは可能でしょう。

たとえばがんと言ってももはやあまりに市場の定義として広範過ぎるため、先日もこのコラムで述べたように作用機序で、たとえば「免疫チェックポイント阻害剤」という領域にフォーカスするとか、そういう戦略になってくるでしょう。

日本で大手とされる新薬メーカーが従前の「競合の収斂(competitive convergence)」から脱却し、戦略の本質に立ち返って経営方針を定め、集中して投資する、これこそが3つの方向性の一つ、カテゴリーフォーカスプレイという戦い方であり、ぜひ各社各様のフォーカス(ちゃんと定めることが大切)で戦っていただきたいと思っています。

次回は(その3)として戦略方向性の2つ目について書きます。

ヘルスケア業界を読み解くキーワード(1)先端技術編①

ヘルスケア業界を担当するコンサルタントとしては、最新のキーワードを業界を、特に業界の変化を読み解くコンセプトとして捉えて理解していなければなりません。

毎週社内メルマガに一つずつ自分の解釈つきで紹介しているものをシリーズで書いていきたいと思います。

シリーズ第1回目は先端技術編です。

 

ベイズ統計

  • ビッグ・データに関連し、ヘルスケアに限った話ではなく政治や金融、ITの分野で近年ようやく活用され成果をあげつつある数学、特に統計の1分野であるベイズ統計は、実は医薬品や医療機器のシーズ探索含む開発期間短縮に威力を発揮することが期待され、応用が始まっています。既に2006年に医療機器開発に関して米FDAからガイドラインを出されました。
  • ベイズ統計(Bayesian Statistics)とは、簡単にいうと従来一般的に理解されている確率・統計論と異なり、既にある情報を基に、より少ない試行(という数学用語が統計学を判り難くしている)すなわち実験でより信頼度の高い推定が得られる手法であり、理論としてはかなり古い(18世紀イギリスの数学者トーマス・ベイズ(Thomas Bayes)が提唱)ものの、最近脚光を浴びているのはいわゆるビッグ・データの台頭に起因しています。
  • 数学的な説明は割愛するが、ベイズ統計は条件付確率に関するベイズの定理が基本、すなわち既にある事象が起こっていることがわかっている前提である仮説が正しいかどうかを検定するアプローチです。ベイズ統計における確率はしばしば「主観確率」と呼ばれ、一見して厳密さを欠くと誤解されることもありますが、言ってみれば「仮説ドリブン」であり、より不確実性が高い状況で威力を発揮する。従来の確率は「頻度主義」であり、無限回の試行(たとえばサイコロ投げ)を前提としているが、ベイズ確率は複数の仮説(MECEな仮説構築が必要)のもっともらしさを調べる、より現実的なアプローチなのです。
  • 一般に基礎数学は直接ビジネスに関係ないと思われているが、そうではない。また、このような考え方をもっているかいないかで行動規範まで左右されることもあります。ベイズ統計はその一つです。
  • IoT、Industry 4.0といわれる流れの中で、今後もっとも必要とされる人材はデータ・アナリティクスができることとよく言われるが、データ・アナリストにとってベイズ統計は必須だという人も出てきています。

 

インシリコ

  • インシリコ(in silico)は珪素を意味するラテン語silicoの中で(この場合inもラテン語です)という意味で、珪素半導体の意味、すなわちコンピュータで、ということです。特にヘルスケア領域においては生体のメカニズムや新薬の効能等をモデリングの上数値シミュレーションすることを意味します。インシリコに対して、動物や人体で試すことをインビーボ(in vivo)、試験管などを用いて実験することをインビトロ(in vitro、vitroはガラスの意味)と言い、医薬品業界や医療従事者は当たり前のように使う言葉です(ラテン語を使うとかっこいいと思うのは米国人もそうですが)。
  • 実際、インシリコ創薬という分野が出現しています。インシリコで新薬をデザインするには、まず創薬ターゲットの探索が必要で、このためにゲノム情報やバイオインフォマティクスを利用します。次に、創薬ターゲットに対してドラッグデザイン(文字通り薬物の設計)を用いて、病因を阻害する薬剤候補を探索します。さらに、その薬物がどういう挙動をするか、インシリコADME(吸収、分布、代謝、排泄)、PKPD(薬物動力学)で計算機で予測するというもので、これらは従来in vivoやin vitroで行なわれていたことを一部もしくはかなりの部分代替するもので、新薬開発プロセスにおいてますますコンピュータとITが浸透していくことを意味します。

 

ファーマコゲノミクス

  • ファーマコゲノミクス、pharmacogenomicsとは、pharmacology(薬理学)とgenomics(ゲノム学、ジェノミクス)との合成語で、広くは遺伝子の違いによる薬の効き方の違いに関する一連の研究を指し、最近ではより限定的に個人の遺伝子型に起因する薬による副作用(重篤事象)の発生を回避することを意味し、最近ではあまり使われなりましたがテーラーメード医療、個の医療を実現するのに不可欠な、重要な研究分野です。
  • 薬の副作用には軽いものから致命的なものまで様々なものがありますが、重篤なものの中には薬剤性肝障害や特定疾患であるSJS(スティーブンス・ジョンソン症候群、薬疹の中でも特に重症のもの)があり、これらは遺伝子に起因することが判ってきています。
  • かつては薬の効き方の違いを「体質の違い」とかたづけていたものが、ファーマコゲノミクスが進展するにつれ、その「体質」とはつまり遺伝子のことであることが次々に判明しており、「下手な鉄砲数うちゃ当たる」的なものであった薬物治療がより選択的に、すなわち有効になってきています。そしてそれを判断するものが「ゲノム診断」と言われる遺伝子型の検査で、既にいくつかの検査は保険収載されています。さらに、遺伝子に起因することが判明した疾患を対象に新たな薬を開発することをゲノム創薬と呼んでおり、ファーマコゲノミクス、ゲノム診断、ゲノム創薬をまとめてゲノム医療ということもあります。
  • 遺伝子編集も今最もホットな分野であり、従来の薬理学の知見の上に、コンピュータやITの進展によるin silicoの拡大、さらに製薬会社のみならず様々な業種の参入の相乗効果が期待される領域です。

 

クオンテイフェロン

  • 昨年、警視庁渋谷警察署で昨年19名が結核に感染していたことがニューズになりました。結核に感染しているか否かを調べる検査としては喀痰検査や血液検査がありますが、よく知られている血液検査法であるツベルクリン反応には実はBCG接種を受けている人が陽性になる(偽陽性)という重大な欠陥があるため、この欠陥を克服する新しい血液検査の方法が既に使われています。この検査がクォンティフェロン(QFT(インターフェロン-γ測定試験)と呼ばれるものです。
  • この検査は、血液を結核菌特異抗原(ESAT-6とCFP-10)とともに20時間程度培養し、特異抗原により刺激を受けたTリンパ球により産生される、インターフェロン-γ(IFN-γ)という生理活性物質の量を酵素免疫測定法により測定し、結核の感染を判定する方法です。BCGの影響を受けずに結核検査が可能であること、血液で、数日間で検査が可能なことから、結核患者と接触があった場合の健診に使用されています。ただし、過去に結核を罹患したことがある人は必ず陽性になるので、新たに感染したか否かの判定には使えないという問題もあるので注意が必要です。
  • 結核は現在でも世界で毎年800万人が感染しその25%である200万人が死亡する恐ろしい感染症であり続けています。日本での感染者数は毎年2万人前後ですが、先進国の中では高い方で「中蔓延国」とされています。乳児の段階でBCG接種を受けてもその効力は成人になる頃には既に失われていますし、必ずしも高齢者だけが感染・発症する疾病でもないため、私たちも留意しましょう。

 

PD-L1

  • 新しい薬の中で、いま最も注目を集めているのががん免疫療法ですが、PD-L1とは、新たに解明されたがん細胞が人体の免疫から自分を防御する抗体のことです。
  • 人体を防御する上で最も重要な働きをする免疫システムが、自らの細胞が変異したものとはいえがん細胞を攻撃できない、したがって人体を侵すがん細胞が増殖できる理由は、がん細胞が発現するPD-L1という物質が、がんを発見した樹状細胞(免疫システムの司令塔的存在)から指令を受けたT細胞(免疫の前線で働く)が、がん細胞を攻撃しようとしても、このPD-L1がT細胞が発現するPD-1と結びつくことで、T細胞が攻撃を停止するという「免疫逃避機構」が作動してしまいます。
  • 新薬の開発の第一歩は、まずこのようなメカニズムを特定することであり、いわば問題の半分は解決されたことになり、次は解決方法の探索になります。そこで、この免疫逃避機構を阻害する、「免疫チェックポイント阻害薬」の開発に各社乗り出すことになりました。抗PD-L1抗体もしくは抗PD-1抗体の開発です。2013年には米科学誌Scienceが”Breakthrough of the Year”に選出した領域でもあります。
  • 日本の中堅製薬会社の中でも、新薬開発がなかなか進まず、長期収載品に頼ってきた代表格が小野薬品で、その将来展望はこれまでは明るくなかったのですが、オブジーボ(一般名:ニボルマブ)という抗PD-1抗体の開発に成功し2014年にはメラノーマ(悪性黒色腫)を適用として承認されたことで一躍脚光を浴びることになりました。
  • ロシュ(中外の親会社)やファイザーといったグローバル大手製薬会社各社も免疫チェックポイント阻害剤を開発中であり、次の大きな医薬品市場セグメントを形成することになるでしょう。

 

プロテオミクス

  • プロテオーム解析(Proteomic analysis)、またはプロテオミクス(Proteomics)とは、特に構造と機能を対象としたタンパク質の大規模な研究のことです。 タンパク質は細胞の代謝経路の重要な構成要素として生物にとって必須の物質です。
  • プロテオミクスproteomicsはタンパク質proteinと「総体」を意味する接尾語-omeの合成語で、ゲノミクス(遺伝子genome+ome)と同じ構成であり、一つのタンパク質を対象とするのではなく、ある組織や個体の中のタンパク質の集合・構成を総体として分析するもので、これによりたとえば正常組織がなぜどのようにがん化するのかを解明し、診断・治療法や予防法を特定することを目的としています。
  • タンパク質は遺伝子よりもはるかに複雑であることなど研究には増殖や分析を行なう上で様々な阻害要因があるのですが、2002年にノーベル化学賞(当時島津製作所社員であり、現役サラリーマンとして初のノーベル賞受賞)を受賞した田中耕一氏の研究は「生体高分子の同定および構造解析のための手法の開発」であり、これはプロテオーム解析の進歩に大きく貢献したものです。
  • 現在最先端の抗体医薬や細胞治療もある特定の一つの細胞の働きが解明されたところを対象にしているのであって、複数のタンパク質の相互作用を対象にしているのではないのですが、実際にはアルツハイマーにしても心筋梗塞にしてもがんにしても複数のタンパク質が関与していることが基礎研究レベルではわかっている場合があり、より効果的な治療の実現に今後プロテオミクスが主役として貢献することが期待されている最先端の分野です。

 

次回も先端技術編は続きます。

アムラン作曲トッカータ Toccata on "l'homme arme"

先週終わった第15回ヴァンクライバーン国際ピアノコンクールの予選課題曲で、マルクーアンドレ・アムラン(Marc-Andre Hamelin)が昨年作曲したトッカータ、Toccata on l'homme armeの楽譜がどうしても欲しくてCliburn Shopで注文し、10日ほどでやっと届きました!

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l'homme armeとはフランス語で「武装した人」という意味です。

 

Cliburn Shopをあらためてのぞいてみました。あれっ なくなってる!

Scorecliburngiftshop.myshopify.com

 

そこで、どこか他で買えないかと思い探してみたら、イギリスのオンラインショップにあるようです。送料込で2,400円ぐらいです。

www.prestoclassical.co.uk

 

この曲の演奏はなんといっても今回のクライバーンで3位入賞しこの曲の演奏でも最優秀賞を受賞したアメリカの新鋭19歳、Daniel Hsu(ダニエル・シュー)の演奏が秀逸です。

コンクール後初の舞台での演奏がもうYoutubeに上がっています!

www.youtube.com

 

この曲は難しそうに聴こえますが、実際に楽譜を見て弾いてみるとやはり難しいです。

コンクール中のコンテスタントのインタビューを聞いても、「本当に難しい」という声がありました。

しかしその難しさは本番数か月前に、2時間近くのソロ・室内楽・協奏曲2曲のレパートリーを仕上げなければならない中初めてこの曲の楽譜を渡され本番で弾かなければならないということも踏まえての難しさでしょう。

5~6分、12ページの短い曲ですし、クライバーン本選出場を果たした30名の天才たちにとっては、コンクールで弾く難曲大曲の数々と較べて特に難しいということではないと思います。

 

わかりやすい主題と半音階的な進行、主題の展開と転調を理解すればなんとかなりそうです。

 

これまであまり国際コンクールの委嘱作品は弾く気になるものがなかったのですが、この曲は最初に聴いたとき、「弾いてみたい」と思いました。

トッカータと名のつく曲は、これまでにラヴェルシューマンプロコフィエフなど弾いてきましたが、やはりその躍動感が好きです。

自分も来週からコンクールを控えているのですが、ぼちぼち練習してみようかとおもいます。

京葉銀行文化プラザを救え~音楽ホールの危機~

京葉銀行文化プラザという素晴らしい音楽ホールを有する施設の存続が危ぶまれています。

このホールは719席を有し、自分もここのスタインウェイのフルコンサートグランドを弾いたことがありますが、都内有数のホールにも決して劣らない、弾いていても聴いていてもほれぼれする音楽施設です。

このホールの概要についてはここに詳しく書いてあります。

https://www.city.chiba.jp/shimin/seikatsubunka/bunka/plazahaishikankei/documents/shiryou.pdf

そもそも日本郵政が17年前の2000年2月に「ぱ・る・るプラザ千葉」として建設し開業したもので、その7年後の2007年には千葉市が20億円(土地および建物)で取得しています。筆者は建設・不動産業界にいたこともあり、不動産評価についても厳しい目で見るのですが、この売却に関して巷で言われるダンピングというのは、建設に270億円を要している点からしても事実のようです。

0612議案質疑:高野はるみ

 

その後、9年前の2008年に京葉銀行命名権を取得し、現在の「京葉銀行文化プラザ」となっています。

7年前の2010年から施設のあり方について検討が開始され、当時の外部評価委員の意見は半数(といっても4名中2名ですが)が「民営化」を主張しました。

4年前の2013年のあり方検討では、独立しての採算確保は困難だとし、公共性の高い建物としてのあり方を検討する方向で結論が出ています。

ところが、今後の施設改修に5年間で10億円の設備投資が必要と試算されたことから、行政(つまり千葉市)としても財政負担を軽減するため、売却する方針を決定し、昨年10月にパブリックコメントを求め、この2月にその意見を公表しています。

www.city.chiba.jp

これによると、48件のコメント中27件が存続を求めるとしていたのですが、それでも千葉市は今年度末を以て施設廃止の方針を決めてしまいました。

そして現在は購入者(千葉市が売却)を募集しようとている状況です。売却方針は音楽ホールを向こう10年存続させることを条件づけています。最新の熊谷千葉市長のTwitterにあります。

 市長が「ご安心ください」と仰っているので安心したいところではありますが、この手のハコモノの話はオーナーが変わってうまくいった話をあまり聞かないのではなはだ不安材料は残ります。

自分がマーケティングに関与したいぐらいです。千葉市に聞いてみます。

ユマニチュード~新しい介護のあり方~

医療・介護に関しては日頃仕事の上でもプライベートでも問題意識を持って情報収集し、また仕事に活かしているのですが、つい先ごろウェブで「ユマニチュード」という概念に遭遇しました。

ユマニチュードとは、介護の世界に革命をもたらすと期待されている、30年以上前にフランスで生まれたケアの手法で、日本でも最近ようやく注目されてきたものです。

一部では「魔法」とも言われていますが、決して魔法ではなく、理解すればきわめて当たり前のことを実践することに他なりません。

ユマニチュードとはフランス語で「人間らしさ」を意味し、被介護者をあたりまえのことですが身体的なことだけでなく心を持つ人間として扱う、というケアの本質、原点に立ち返ることの重要性が、むしろ有効であることが実証されたからこそ注目されているものです。

この手法が日本に紹介されたのは2011年とつい最近のことで、このことからも如何に日本の介護がガラパゴス的であるかがうかがいしれますが、昨年本格的に導入が開始され、全国の介護事業所や療養型病棟で研修が行なわれ、また認知症患者の側からも支持され注目度が上がっているようです。

いわゆる2025年問題で介護需要が急増し、介護保険制度も岐路に立たされる(というとジャーナリスティックで良くないですが、介護人材の面でも財源の面でもこのままでは逼迫度が高まることは目に見えています)、労働集約的かつ重労働で、「善意の人々」にかろうじて支えられている介護業界においては、ITやロボットといったハイテクではなく、そもそもケアのアプローチ自体に解決の余地が大きく残されている、ということを示すものです。

ユマニチュード以外にも、イギリス生まれの「パーソン・センタード・ケア」、アメリカ生まれの「バリデーション」など、基本概念を共通にするアプローチがあります。

医療もそうですが、ローテクにはローテクの価値がありますし、むしろローテクの方が優れていることがあることの好例と言えるでしょう。

医療の公開データがすごい~NDBオープンデータ分析開始

医療の情報公開は実はとても進んでいます。

昨年秋、厚生労働省医療機関が提出を義務付けられている診療データをまとめて一挙公開しました。

www.mhlw.go.jp

 

このデータは、診療報酬に関する情報、すなわち医科と歯科における初診、再診、入院基本料、管理料、手術料、薬剤費などが都道府県別、性別、年齢階級別(5歳刻み)で把握できるものです。

これをきちんと分析すれば、どこでどれだけの診療が行なわれ、何に費用がかかっているかを把握することができます。

薬剤費について分析を始めたところなのですが、このデータがまた膨大です。

データはすべてExcelでダウンロードできるのですが、このように公開されています:

 

薬剤

都道府県別に分析するか性年齢別に分析するかは選ばなければならないのですが、一つの目的は高齢者にどれだけの薬剤費が集中しているかを見ることなので、性年齢別のデータ、つまり上のなかから5つのシートをダウンロードし一つのシートにマージしました。

48列×13,473行のデータになりました。

薬剤費は薬価(公定価格)と数量に分けて表示されているので、各薬剤の総額を出し、70歳以上の薬剤費の全体約7兆円に占める割合を計算すると、49%となりました。全体の半分は70歳以上が占めるということです。

しかしこれはあくまでも薬価ベースなので、公的負担ベースでみるともっと高齢者の割合は高くなります。70歳未満は3割負担ですが、70歳以上は2割もしくは1割負担だからです(特定疾患などまた別のケースもありますがこのデータからはわからないです)。

次に、薬剤別にどの薬が最も使われているかを金額ベースでみるとこんな感じです。

医薬品名 総額
プラビックス錠75mg 107,948,606,517
レミケード点滴静注用100 100mg 78,530,731,268
クレストール錠2.5mg 68,293,791,536
ネキシウムカプセル20mg 65,292,970,667
オルメテック錠20mg 63,980,587,109
ジャヌビア錠50mg 60,260,081,693
アバスチン点滴静注用400mg/16mL 58,363,016,308
ゼチーア錠10mg 52,903,623,506
ミカルディス錠40mg 51,730,560,392
モーラステープL40mg 10cm×14cm

49,680,214,484

 

プラビックス錠75mgが一位でおよそ1,000億円です(薬価ベース)。

www.qlife.jp

ここにプラビックスの説明がありますが、抗血小板剤、すなわち血が固まらないようにする薬です。血が固まることで起こる血管障害を治療もしくは予防する需要がそれだけ高いということです。

ただしプラビックスには75mgだけでなく25mgもあるので、合せると1,200億円ぐらいになります。

また、これはこれから分析するのですが、個別の薬剤別だけではなく、たとえば中枢神経系の薬剤費はどの程度でどの年齢層で多く使われているか、といった疾病別×年齢階級別の分析も可能ですし、新薬と後発品(ジェネリック)の金額ベースでの比率はどの程度かという分析もできます。

厚労省がたびたび公表しているジェネリックの使用割合というのはあくまでもジェネリックが存在する医薬品の有効成分について、数量ベースで集計しているものなので(しかも数年前に算出方法を変えましたね・・・)金額ベースではもっとずっと低い割合になる筈です。

今回は第1回の発表なので、今年、来年と時系列で追っていくと増減もみることができます。

自分の仕事にも活用していきたいと思っています。

自己実現とは何か・・・自己超越の手段に過ぎない

マズロー欲求5段階説というのは広く知られています。

あらためてこれがどういう背景で考え出され、どういう示唆があるのかウェブで調べてみようと思ったらこんな記事がありました。

daxiazzz.hamazo.tv

なんと5段階ではなく6段階だったのですね(`・ω・´)

f:id:jimkbys471:20170609154407j:image

仕事は基本的には(労働という意味において)せいぜい4番目の欲求まで満たすものというのが一般的な考え方なのでしょうか。

 

matome.naver.jp

 

NAVERまとめはときどきあまり役に立たないまとめもありますが、これに関してはとても参考になりました。特に「夜と霧」の著者で有名なフランクルの言葉を引用しているところが本質を衝いています。

 

人間存在の本質は、自己実現ではなく、自己超越性にあります。自己実現は、もしそれが目的そのものになると達成されえず、ただ自己超越の副次的結果としてのみ達成されるものなのです。

出典V.E.フランクル 「意味による癒し ロゴセラピー入門」

 

みごとに簡潔に言い切っていますね。つまり、マズロー欲求五段階の最上位にある自己実現は、自己超越の手段であって、それ自体が目的ではないということなのです。

目から鱗です。

人生観変わりましたね。進化しましたね。

4段階目の承認欲求ですが、これは人から認められたい欲求です。人から認めれらたい、とは誰しもが思うことです。SNSなど承認欲求がなかったら成り立ちませんね。ぼくはSNSは情報収集とイベントの連絡に主に使っています。人が何か賞をもらったとかリゾートに行ったとかいい食事をしたとかはすべて広告とみなしてスルーしています。

この六段階目の自己超越欲求からしたら承認欲求など2つも次元が下の話なのです。

承認欲求に突き動かされて生きるなんて「ちっせー」としか思えません。

そして、「生きがいを感じたい」とか「すごい自分になりたい」なんて自己実現ですら安っぽく見えてしまいます。

 

NAVERまとめにはこうもあります:

他者への奉仕のために自らを忘れること・神の認識を高めること・地球全体のためになる生き方にむけて自分の意識を高めることなどを通して、物質的生活に固執し、腐敗してしまいがちな自らの内在性を超えようとする働き

おおお。なんかすごく宗教的ですが「腐敗してしまいがちな自らの内在性を超えようとする」にはなぜかすごく共感できるものがあります。

現実に、仕事、家庭、人間関係、目の前のことで忙殺されそうな時こそ、「自己超越だぞ!」と言い聞かせることにしました。